2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年4月7日

 キッシンジャーは「回復された世界」という本で、バランス・オブ・パワーは自然に出てくるものではない、と言っている。19世紀には英国がバランサーの役割を果たした。今、米国は、中東でその役割を果たしていない。オバマは「米国は世界の警官ではない」と言った。しかし強制的な執行者なしの均衡は、ほぼ考えられない。イランは今も革命的国家である。米引き揚げ後の中東では、スンニ派もシーア派も覇権を目指し、闘争を続けるであろう。

 「地政学的先細り」は多面的な動きである。国内政治や財政状況により、軍事費は削減されている。

 今のところ中東からアジア・太平洋への軸足移動が、政権が大戦略に近づいた例である。しかし中東を燃え上がらせ、アジアで緊張を高めるのではどうしようもない。中国は、アジアへの軸足移動は中国封じ込めが狙いではないかと疑っている。

 オバマに必要なのは、キッシンジャーのような人だろう。キッシンジャーは「平和の成就は平和への願望のようにたやすくない。平和――というよりも戦争回避――が主たる目標であった時に、国際システムは最も情け容赦のないメンバーに牛耳られてきた」と言った。オバマはその言葉をよく考えてみるべきだろう、と指摘しています。

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 この論説は、的を射た良い論説です。巷間よく言われる米国衰退論には賛成できませんが、オバマ政権はその外交・安保政策が対外介入に消極的になっており、米国の存在感が世界的に後退しているのは事実です。

 特に中東ではそれが顕著です。サウジはイスラエルに、非公式に、これからはあたかも米国が中東にはいないように考え、行動する必要があると言ったといいます。エジプト、イスラエル、サウジなど、かつての同盟国が米の言うことを聞かなくなっています。といって、イランとの関係がそれを埋め合わせるわけでもありません。ウクライナ関係でも米国の存在感は希薄です。アジアへの軸足移動も、その焦点がぼける傾向があります。この論説でも指摘がありますが、シリアへの対応が米国の威信を傷つけた要素は小さくありません。

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