2024年11月22日(金)

不況を生き抜く管理会計

2009年5月22日

ホテルと航空運賃の値下げが
増益に結びつきにくい理由

 例として、ホテルや航空運賃を考えてみよう。

 ホテルや航空運賃は、変動費が少なく固定費の多い典型的なビジネスだ。ひとりの宿泊客・乗客が来てくれれば売上が上がる。その売上に比例して掛かるコスト(変動費)はきわめて少ない。ホテルの場合、シーツやタオルのクリ-ニング代、新聞代、備品の補充代、水道光熱費。こうした変動費は高級ホテルでも1000円は掛かっていないと思う。飛行機の場合でも変動費は機内食とジュース代くらいしか見当たらない。しかしどちらも固定費が高いのだ。ホテルの土地・建物・設備への投資、航空機への投資、維持費、そして人件費が重くのしかかる。

 そんな固定費体質だから「成功条件1」に照らして値下げはできる。事実、ホテルも航空運賃もかなりの値下げが行われている。しかしそれが爆発的な数量増加(=お客さんの増加)にはなかなか結びつかない。

 なぜなら、どちらのビジネスにも「キャパシティ(収容力)の上限」が存在するからだ。値下げしてお客さんが押し寄せたとしても、部屋数と座席数というキャパシティ(収容力)に上限があるため、そこに達したらあとのお客さんは断るしかないのだ。まさか廊下に泊めたり、立ち席で飛ぶわけにはいかないだろうから。

 まったく同様に、英会話学校や学習塾などのスクールも「キャパシティ(収容力)の上限」が存在するビジネスだということはお分かりいただけるだろう。「キャパシティ(収容力)の上限」は値下げの成功条件2「値下げによって販売数量(Q)が大幅に増加すること」を阻む要因となるわけだ。このような「キャパシティ(収容力)の制約」を受けるビジネスは、値下げに向いていないと言える。


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