─アベノミクスに対する評価は? これは日本経済を新しい局面に移行させるものだと考えていますか。
現在までのところうまくいっている。デフレ期待が終わったからだ。
心配なのは将来。第1の矢の金融政策でデフレの問題は解決できるだろう。第2の矢の財政政策はある程度効果がある。しかし、同時に消費税の増税をしたので判断は難しい。
第3の矢の成長戦略には様々な策がある。TPPに参加し、貿易と投資を自由化することは大切だ。日本は農業で妥協したくないようだから、たいしたことができなかったという結果になることを心配している。
多様な成長戦略の中では、優先順位を考えるべき。効果の大きい政策を実現するために政治力を使うのが大事。一番有効なのは女性の活用。単に労働市場に参加する女性の数を増やすのではなく、女性がより経営上の戦略決定に関与することが必要。
─25年後、日本はどうなっていると思いますか。
日本経済が崩壊することなどないから安心してほしい。ただし、最大の問題は労働力人口の減少と高齢化。外国人労働力を受け入れずにこれを乗り切るのは難しいのではないか。高齢化するのだから、より長く働かなければならない。そのためには雇用と昇進のシステムを変える必要がある。年功賃金を続けながら定年を延ばすことはできない。
若い世代が子どもを持たなくなっているのは世界共通の現象。アメリカもそうだが、移民がある。移民はより多くの人間が来るということであり、また移民の第一世代はより多くの子どもを持つ傾向がある。だから、移民によって二重の意味で人口を増やすことができる。
─今後、日本がより発展するために何が必要ですか。日本の政治リーダー、経営者に何を期待しますか。
政府に多くを望むことはできない。望むのは強いリーダーというよりも、正しいことをするリーダー。経営者はより厳しい国際的な競争環境にさらされる。残念ながら日本語は国際的な言語ではない。英語を話し、世界に出ていくことが望まれる。若い世代はなおさらだ。市場が小さければ自ずと外に出ようとするだろうが、日本の国内市場は大きい。たしかに日本は居心地が良いだろうが、安住するのではなく、人々を外の世界にさらすことが必要である。
(聞き手・原田 泰〔早稲田大学政治経済学術院教授〕)
■創刊25周年記念特集 「25年後を見据えた提言」
英知25人が示す「日本の針路」
◎経済、企業
石黒不二代(ネットイヤーグループ社長兼CEO)「ネットが動かす未来のマーケティング」
浜田宏一(米イェール大学名誉教授、内閣官房参与)「“成熟した債権国”化する日本の今後の針路」
村上太一(リブセンス社長)「起業家育成へ教育・選挙改革を」
ポール・サフォー(未来学者、デジタルフォーキャスター)「シリコンバレーの強みは何か」
ヒュー・パトリック(米コロンビア大学名誉教授)「日本人よ もっと外の世界へ飛び出せ」
入矢洋信(トーヨー・タイ社長)「海外の事業は、まずはやってみる、やらせてみる」
千本倖生(起業家、元イー・アクセス社長/会長)「起業家は描きうるなかで最大の夢を持て」
◎政治、国際関係、安全保障
中西輝政(京都大学名誉教授)「25年後の米中と日本がとるべき長期戦略」
井上寿一(学習院大学長/法学部教授)「高まる“大統領型”首相待望論 将来の日本政治の姿」
ジェームズ・ホームズ(米海軍大学准教授)「軍事的ジレンマに陥る中国 日米のチャンス」
鈴木英敬(三重県知事)「地方分権の議論は発想が逆」
小谷哲男(日本国際問題研究所主任研究員)「太平洋を“開かれた海”へ “関与”戦略への転換」
山田耕平(レアメタルトレーダー)「草の根国際協力を国益に繋げ」
◎教育、人材活用、医療、司法
松田悠介(Teach For Japan代表理事、京都大学特任准教授)「日本の教育現場に課題解決能力の高い人材を」
菊川 怜(女優)「大学で学ぶということ」
駒崎弘樹(認定NPO法人「フローレンス」代表理事)「“イクメン”がデフォルト化している日本を創る」
亀田隆明(医療法人鉄蕉会・亀田メディカルセンター理事長)「日本は世界の医療産業国を目指せ」
山本雄士(ミナケア代表取締役)「さらば“ブラック・ジャック”名医論」
麻生川静男(リベラルアーツ研究家)「日本人のグローバルリーダーを育てるために」
久保利英明(日比谷パーク法律事務所代表弁護士)「世界に立ち遅れた日本の司法界 改革への3提言」
◎復興、観光、スポーツ、芸能、暴力団
星野佳路(星野リゾート代表)「25年後に大転換迎える日本の観光 旅館が切り札に」
宮本慎也(元プロ野球選手)「野球界に必要な地盤固め」
三遊亭圓歌(落語家/落語協会最高顧問)「古き良き“寄席”の笑い」
溝口 敦(ノンフィクション作家、ジャーナリスト)「衰微する暴力団、台頭する半グレ集団」
西本由美子(NPO法人「ハッピーロードネット」理事長)「福島浜通りへの帰還」
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