第2次安倍晋三内閣が2012年12月26日に発足して、ほぼ1年が経つ。これまでのアベノミクスの政策効果を評価してみたい。言うまでもなく、アベノミクスは大胆な金融緩和、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の3本の矢からなる。成長戦略の効果は長期的なものであり、評価するには早すぎるので、第1と第2の矢についてのみ考えたい。
予測を変えてきたエコノミスト
金融緩和の効果について、当初多くのエコノミストは懐疑的だった。日本経済研究センターが約40人のエコノミストの予測を毎月集約している「ESPフォーキャスト調査」によると、政権発足直後の13年1月調査では、13年度の実質GDP成長率は1.61%、14年度は0.23%、14年度の消費者物価上昇率は2.34%と予測していた。しかし、13年11月調査では、実質GDP成長率がそれぞれ2.70%、0.78%、14年度消費者物価上昇率は2.79%(消費税引き上げ分を含まないと0.75%)となっている。
要するに、アベノミクス以前に比べて実質GDP成長率と消費者物価上昇率の予測は上方改訂されている。当然である。13年初から現在までで多くの統計が、大胆な金融緩和政策の成功を示しているからだ。現実にも実質GDPは年率で13年1~3月期4.3%、4~6月期3.8%、7~9月期1.9%と高い伸びを示してきた。
こういう事実を見れば、大胆な金融緩和の効果がないというのは不可能であろう。そこで、事実を見ざるを得ないエコノミストは、将来予測を次々と上方改訂してきたわけである。
もちろん、第1の矢、大胆な金融緩和を唱えていたリフレ派に対しての批判はある。物価が上がって賃金が上がらなければ、国民の生活は楽にならないではないかという批判である。
確かに、13年10月までの統計では、賃金は上がっていない。私は冬のボーナスで賃金の上昇が見られると予想しているが、賃金よりも雇用が増えることの方が大事だと考えている。失業があるということは、働きたくても働けない人がいるということであり、単に所得がないというだけではなく、社会に必要とされていないという感情を与える。命をすり減らすほど働かされるのは論外だが、適度に働くことは自尊感情の根源をつくることにもなる。