2024年4月25日(木)

経済の常識 VS 政策の非常識

2014年2月3日

 図1は、雇用や賃金について示したものである。繰り返すが、確かに、賃金は上がっていない。しかし、雇用は増えており、賃金の支払い総額は増えている。GDPはすべての労働所得とすべての利潤とを足したものであるから、GDPが増えている以上、賃金の支払い総額も利潤も増えているのは当然のことである。こうして雇用が伸びていけば、いずれ人手が不足し、人手を集めるために賃金は上昇を始める。それは十分に失業率が低下し、働きたい人のほとんどが仕事に就けるということでもある。

 さらに、実質輸出が増えていないという批判もある。確かに、大胆な金融緩和がこれまでの異常な円高を抑えて為替レートを低下させ、株などの資産価格を引き上げて、輸出や投資や消費を拡大すると考えていたリフレ派にとってはやや意外な結果となっている。投資や消費は伸びているが、実質輸出は確かに伸びていない。しかし、輸出が伸びないのは、大胆な金融緩和が円安と輸出の急増をもたらし、国際協調を危うくするとか為替切り下げ競争が起きるなどと批判していた反リフレ派にとっても意外な結果であるというべきだろう。

 私自身もリフレ派のエコノミストであるので、まず、正直に意外な結果であったことを白状しておこう。もちろん、円安が実質輸出の増加に結びつくまでには時間がかかるので、いずれ輸出が伸びるかもしれない。しかし、大胆な金融緩和が輸出を伸ばさずに景気を拡大するのであれば、それは良いことだと思う。なぜなら、金融緩和が、国際的軋轢を増すことなく景気を拡大する方法だと分かったからである。金融緩和は、為替だけでなく、資産価格の上昇や資金の利用可能性が増すことや将来の物価上昇期待など多くの経路を通じて経済を刺激する。その効果が限定されていないことは良いことなのだ。

 図2は鉱工業生産、全産業活動、第3次産業活動の各指数を示している。鉱工業生産も伸びているが、サービス産業が主体の第3次産業も伸びている(もちろん、すべての産業を合わせた全産業活動指数も伸びている)。


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