2013年の日本経済をふりかえると、正に「アベノミクス」に彩られた一年だったといえよう。
長年経済報道に携わってきたが、一年でこれほどまでに経済が劇的に好転した例を筆者は知らない。為替相場は12年の安倍内閣の発足前日、2012年12月25日には1ドル=84円だった円相場は20円以上も円安が進み、株価は1万80円から1万6000円台前半へと6000円以上も値上がりした。日本銀行の総裁も安倍政権の方針に沿う方向で刷新した。黒田東彦総裁が異次元緩和を進めた結果、円高が修正され、日経平均株価は安倍首相の就任前から約1.5倍に上昇した。株価が上がると世の中の雰囲気は明るくなり、消費も旺盛になって、経済の好循環ができつつある。
経済運営については各紙概ね評価
アベノミクスを総括するにあたり、年末までにどんな論調が出てくるか注目していたが、12月の新聞各社の社説などをみる限り、経済運営については概ね評価する向きが多かったような気がする。昨年の12月25日には朝日新聞は「アベノミクス 『危ないミックスは困る』」などと揶揄していたが、経済の好転が示されたことから、いまやそうした声はあまり聞かれない。日本経済新聞の12月26日の社説では「財政再建への踏み込みが甘いなど問題点はあるが、『日本経済を立て直そう』、『日本の底力を世界に示したい』という気力を国民の間に醸し出した効果は無視できない」と指摘した。多くの人が共感する思いだろう。
円安の影響で輸出関連企業を中心に業績も好転し、昨年まで苦境に陥っていた日本を代表する電機メーカーなどもようやく復活の兆しが出始めている。多くの企業で業績が回復し、2014年の春闘では、賃上げを要求する動きが活発になっている。
ただ死角がないわけではない。安倍内閣が「3本目の矢」として掲げてきた成長戦略はその内容や期待される効果はまだまだ不十分だ。26日の安倍首相の電撃的な靖国神社参拝で、今後、中国や韓国が日本製品の不買運動や反日デモなどが起きた場合、尖閣諸島を巡る問題の影響からせっかく回復してきた自動車の販売など日本企業の活動は窮地に陥りかねない。2013年の訪日外国人が1000万人を超えたり、2020年の東京オリンピック開催が決まるなど日本にとっての好材料も生まれた2013年だったが、この好調なモメンタムを今後も続けてゆけるかがカギになる。