2024年12月8日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年4月28日

 3月13日の米下院米中経済安全保障検討委員会において、Bonnie S. Glaser米CSISアジア部門上級顧問は、議会はオバマ政権に対し、アジア回帰についての戦略ペーパーを早急に作成するよう要請すべきである、と証言しています。グレイザーの証言のうち、習近平体制下の中国軍の動きとそれに対して米国議会が取るべき具体的政策について述べた部分について、以下、紹介します。

 すなわち、中国の人民解放軍は、習近平との関係に大いに満足しているようだ。特に習が、人的関係のみならず、中国軍の近代化努力を支持していることに軍は満足しているようである。

 習の解放軍との関係は、父親を通じて70年代にGeng Biao(耿彪)国防部長の秘書官に抜擢されて以来のことである。福建省にいた17年間に革命第2世代(「太子党」)の数人の軍将校たちと親交を結んだ。

 習が中央軍事委員会主席になったのは、胡錦濤と異なり、国家主席になるのと同時であった。これから見ても彼は軍を極めて短期間に掌握したことになる。

 今年の中国軍の予算が対前年比12.2%増という大きな数字になったことは、習が軍を支持していることの明確なしるしである。これは2011年以来では、最大の増加率である。軍の海洋進出の重要性に最初に言及したのは胡錦濤であったが、これを引き継いだ習は2013年7月の政治局の特別会合において、その動きを加速させることを力説した。

 中国軍の関係者たちは基本的に領土・主権問題についての「強硬派」であり、彼らは、米国のアジア回帰は中国とその周辺諸国を対立させるものと見ている。このような見方は中国の外交部の役人たちにも共有されるようになっている。

 そして今や軍人は文民たちとの十分な意思疎通もないまま、最高指導部の承認だけで動く傾向を示している。例えば、最近の東シナ海における防空識別圏は、軍が外交部との協議なく、最高首脳部の承認だけで独自に設定したとする見方が根強い。

 最近の中国の国防白書は、軍の「戦闘準備」と実戦訓練を強調している。「戦闘準備」は長い間の軍の基本的課題ではあったが、習が中央軍事委員会主席になってからは、現実に優先度の高い課題になった。

 中国近海における軍事訓練は強化されており、東シナ海と太平洋の間を往き来する海軍小艦隊は異なった多様な経路を航行するようになり、この海域での航空機の偵察活動も頻繁になっている。また、南シナ海における海軍の訓練も、明らかにその数や規模が大きくなっている。


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