ウォールストリート・ジャーナル紙が、3月9日付社説で、「予算制約のためアジア回帰は不可能である」とのマクファーランド国防次官補の発言を引き合いに、オバマ政権が目指す米国の社会福祉水準向上が、アジア回帰を空疎なものにしている、と述べています。
すなわち、オバマ政権の予算の優先順位づけが米国の対外戦略をどれほど阻害するか心配している全ての人は、新たな懸念を抱くことになった。まず、ペンタゴンの高官が、予算制約のために、米国のアジア回帰は明らかに不可能であるから、再考されている、と口を滑らせた。そして中国は、国防支出の二桁増、今回は12.2%増を発表した。
マクファーランド国防次官補の発言は、あまりに率直過ぎたためか、すぐに軌道修正が試みられた。彼女は、「アジア回帰は可能であり継続されるであろう」と補足説明で言った。しかし、米国の同盟国とライバル国は、最初の発言が真実であろうとの認識を強めている。彼らは、オバマ大統領の「米国自身の国家建設」が、重要な戦略的利益のために使える金を益々少なくさせている、と見ている。
アジア回帰は、2020年までに太平洋に展開する米海軍力を現在の50%から60%にし、米国とパートナー国の軍隊の協力を強化することにより、中国の侵略を抑止し、米国の友邦を安心させることが目的である。
問題は、2009年以来、オバマ政権が国防費を5000億ドル削減していることである。今や、陸軍を第二次大戦前の水準まで削減しようとしている。オバマ政権は、強制削減が求める、海軍を第一次大戦の水準まで削減することは望んでいない、と言っているが、今後30年の建艦計画は、海軍が任務を遂行するのに必要と言っている最小限の306隻を下回る見通しである。それは、アジア太平洋においては著しいハンディキャップとなろう。アジア回帰が進展したとすると、2020年には、アジアにはより小さな米海軍のうちの60%が展開するということになる。
昨年の予算問題は、海軍に、5隻の艦船の展開の廃棄と、空母ハリー・トルーマンの打撃群の展開を6カ月延期することを強いた。昨年夏、海軍は、285隻の艦船のうち平均で95隻しか展開できなかった。グリナート海軍作戦部長は、その要因は予算である、と言っている。米国は、通常、3つの空母打撃群と3つの両用即応群を、1週間以内に緊急事態に対応できるようにしているが、現在、それぞれのうちの1つしか使えない。一方、艦船と航空機の整備の遅延は、今後数年間の即応態勢を損ねている。
米海軍のアジア寄港、アジアにおける演習だけでなく、全世界での信頼性構築を通して、アジアの指導者たちは米国の予算計画を読み解くことができ、彼らは、米国がシリア、イラン、ロシアを抑止することに失敗したことから教訓を得ている。