ワシントンでは、予算問題を、議会とホワイトハウスの間での支出に関する論争の面で非難することが一般的だが、米国の国防支出、ひいてはグローバルな安全保障への真の脅威は、オバマ政権の望む米国の社会福祉水準向上である。これが国防支出を圧迫することは不可避である。この現実が、アジア回帰についてのいかなる多数の非現実的な言説にも増して、米国のアジアとの関係を形作っている。
マクファーランドの無防備なコメントは、真実を語った失言である。米国の友邦と競争相手はそれを知っており、現実が明らかになるにつれて、彼らは自らの軍事的、戦略的利益について再計算を始めるであろう、と指摘しています。
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今後の米国国防予算に関する国防総省の考え方は、軍の規模縮小を図る代わりに、近代化プログラムと技術的先進性の維持を優先する、というものです。しかし、実際の予算編成にあたっては、オバマが優先する社会福祉関係予算の圧迫を受けて、思う通りにいかないようです。それを率直に指摘しているのが、ここで取り上げられている、マクファーランドの発言です。ただし、彼女は、最後には外交的な言辞を用いて、現状でも国防省はアジア・リバランスの達成のために努力しているし、その達成は可能である、と釈明しています。
これに対して、この社説は、彼女の元の発言に重きを置き、「マクファーランドの無防備なコメントは、真実を語った失言である」と言って、オバマ政権の政策を咎めています。
社説が咎めているのは、今後の見通しというよりも、主として国防政策の実施の現状です。軍や官僚機構全体に手を入れる前の状況で予算の制限があれば、どうしても規定計画の遅延、空母機動部隊の出動などの兵力展開の頻度の削減、特に演習、訓練の削減などにしわ寄せが行くのは当然です。それは、この社説で例示されているとおり、かなり惨憺たる状況のようです。
そして社説は、オバマ政権の望む米国の社会福祉水準向上こそが、米国の国防支出、ひいてはグローバルな安全保障への真の脅威である、とまで断定しています。
米議会内における国防予算をめぐる攻防はまだこれからの状況のようですが、その核心はオバマの社会保障予算の削減が出来るか否かであるというのは、この社説の指摘する通りでしょう。もう一つの選択肢は増税ですが、これはティー・パーティの影響力の強い共和党が多数を占める下院では、困難な状況でしょう。
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