2024年4月18日(木)

解体 ロシア外交

2014年4月30日

住民投票前倒しの事情

 そして、クリミアはロシアへの編入をめぐる住民投票を3月16日に行なった。当初、住民投票は5月25日のウクライナ大統領選挙と同時に自治権拡大要求を問う内容で行なわれる予定だったが、後に3月30日に前倒しされ、更に3月16日に早められた上に、問われる内容も「ロシアへの編入」ないし、「ウクライナへの残留及び自治権拡大要求」という二択に変更された。この2度の日程前倒しから、ロシアとクリミアの親ロシア派の焦りが感じられる。

 しかし、それより早くには日程を設定できなかった事情があった。クリミア情勢が緊迫していた頃、ロシアはプーチン大統領の肝煎りで誘致したソチ冬季五輪およびパラリンピックを開催していたからだ。平和の祭典・五輪開催期間中は世界中で軍事行動が停止されるのが慣例である中、開催国が世界の緊張を煽ることは憚られたのは間違いない。投票が実施された3月16日がパラリンピックの閉幕日であったことが、それをよく物語っている。

 住民投票は当初からウクライナ暫定政権および欧米から激しく非難され、暫定政権は有権者名簿へのアクセスを不能としたが、予定通り決行され、96.77%がロシアへの編入への賛成票を投じた。だが、この結果はクリミア住民の総意とは言いがたい。

 何故ならウクライナ人やクリミア・タタール人などロシアへの編入に反対する約4割の住民が投票をボイコットしたと考えられているのみならず、そもそも投票は軍事的圧力の下で行なわれたと言われており、仮にロシアへの編入を望んでいなくてもそのような意思表示は事実上不可能であったとみられる。選挙違反も多かったようで、事前に「賛成」にマークされた投票用紙があった、特別市セバストポリでの住民投票では同市の全人口の123%が賛成票を投じたことになった、などの違法行為が報じられている。

確実に進むロシアとの一体化

 それでも、投票結果を受け、クリミア議会は3月17日に独立した主権国家「クリミア共和国」としてロシアへの編入を求める決議を採択した。同領内でのウクライナ国家機関の活動停止やウクライナ国有資産(軍、鉄道、ガス石油関連会社など)接収などを盛り込んだだけでなく、標準時間もロシアの首都モスクワに合わせ、通貨もルーブルに変更することが決められ、しばらくは多くの混乱があったが、確実にロシアとの一体化が進められていった。なお、軍港がある南部のセバストポリ市はモスクワ市やサンクトペテルブルク市と同様の特別の地位を与えられた。


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