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2014年5月21日

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井上久男 (いのうえ・ひさお)

ジャーナリスト

1964年生まれ。88年九州大学卒業後にNEC入社。92年朝日新聞社に転職。主に経済部で自動車や電機産業などを担当。2004年に独立。著書に『メイド イン ジャパン 驕りの代償』(NHK出版)。近著は『自動車会社が消える日』(文春新書)。

 「見える化」とは、野菜を入れた袋に付いている数字を消費者が専用のホームページに入力すれば、種を蒔いた時から収穫まで、何月何日にどのような作業をしたかをすべて開示、使用した農薬や肥料の種類までもすべて分かるシステムのことだ。グーグルマップと連動し、栽培した畑の位置を航空写真で見ることもできる。

 松本氏は、旭化成の医薬事業部の元営業マン。20年前、父に頼まれてUターンして実家の農園を手伝うことになった。

 試行錯誤を続けながら経営の合理化に着手、生産情報管理システムを独自開発した。現在、松本農園では従業員は1日の作業が終わると、タブレットPCに作業状況などを入力する。その結果、万一、出荷した野菜に品質問題が起これば、栽培した畑や出荷作業担当者まで即座に突き止められる。作業環境の細かいデータを入力するため、収穫量の少ない畑とその理由が一目瞭然となって原価管理の「見える化」もできた。

 農家自らが生産履歴を管理することが顧客に評価されたため、値引きを要求する大手スーパーに対しては価格交渉を有利に進めることもできるようになり、黒字化に貢献した。

 事業拡大を狙って松本農園は輸出も開始。そこで求められたのが「グローバルGAP」で、取得の際に役立ったのがITシステムだった。「この認証やそれに準じたものがなければ、事実上、海外の大手流通と取り引きすることは不可能。日本の農産品は『安心安全』や『こだわり品』と言っても、それはあくまでイメージ的なもの。それを証明する『証拠』がなければ海外では通用しない」と松本氏。「日本版GAP」はあるが、グローバル版と比較すると、国際市場では通用しない「ガラパゴス化」状態にあるようだ。

 実家の先進的な管理技術やITシステムを標準化してビジネスにしようと、松本氏はファーム・アライアンス・マネジメントを起業。同社のクラウドタイプの生産情報管理システム「ファームレコーズ」は2年前、スペインで開催された「グローバルGAPサミット」で表彰され、すでに国際的に認知されている。「うちのシステムを活用すれば国際市場に打って出ることも可能。志を同じくする農家同士がアライアンスを組むことで、出荷のアイテムと規模を拡大させて国際市場で競争に勝つ連合体を作りたい」と松本氏は語る。

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