「見える化」、原価管理、国際認証、カイゼン、標準リードタイム……。出てくるワードは製造業のものばかり。外部の知恵がTPPを控えた農業を変える。
生産情報管理システムの導入、国際規格の認証取得を軸にした「農家連合」を掲げるファーム・アライアンス・マネジメントの松本武社長
西日本旅客鉄道(JR西日本)が4月18日、安全性などを担保する農業の国際認証規格「グローバルGAP」獲得にノウハウを持つ農業支援ベンチャー「ファーム・アライアンス・マネジメント」(本社・東京都千代田区、資本金3400万円、松本武社長)に出資、株式の約47%を取得して筆頭株主となった。松本社長(47)は「JR西日本の信用力を背景にビジネスを拡大させ、日本の農業の国際競争力向上に貢献したい」と語る。
TPP(環太平洋経済連携協定)交渉が大詰めを迎え、今後、日本の農業が生き残るためには、生産性改善など一層の経営効率の向上や新規市場の開拓が求められる。JR西日本沿線には生き残りを模索する大規模農家や高齢化による担い手不足の地域も多い。出資には「沿線経済」の活力を維持するために農業支援の手段を確保する狙いがある。
理想は「アップル」
熊本の松本農園
ファーム・アライアンス・マネジメントは2年前に設立。そのルーツは、阿蘇くまもと空港から車で10分ほどのところにある松本氏の実家、松本農園(熊本県益城町、従業員31人)だ。約50ヘクタールの農地を活用しながらニンジンやゴボウなど7種類の露地野菜を栽培している。
「理想とする企業はアップル」を掛け声に、顧客目線を重視したITシステムを2009年から本格導入して栽培プロセスの「見える化」を徹底したことで「畑が見える農園」として注目され始めた。トヨタ生産方式の研究者や企業の農業参入に興味を持つ日本経団連が視察に来るほどだ。