2024年12月22日(日)

経済の常識 VS 政策の非常識

2014年1月2日

 経営所得安定対策(旧・農業者戸別所得補償制度)に批判的な人は多い。普通の真面目な人にとって、政府がお金を配るというのはなんとなく不健全に感じるのだろう。しかし、十分な仕事がない、仕事があっても給料が低すぎる、働きたくても病気などで働けない人も多い。政府は、お金を配らざるを得ないものだ。というよりも、むしろ現実にそうなっている。

 表は、農業の売上のうち、政府の補助金について農家の水田面積ごとに示したものである。表を見ると、面積が大きくなるほど所得補償額が大きくなっている。例えば、1ヘクタール未満では11.2万円の受取に過ぎないが、20ヘクタール以上では1438.4万円にもなっている。しかも、売上に占める所得補償の比率も、1ヘクタール未満では11.1%であるが、20ヘクタール以上では36.4%になっている。大きな農家ほどより高い比率で所得補償を得ているのである。

(出所)農林水産省「農業経営統計調査 平成23年」営農類型別経営統計(個別経営、第1分冊、水田作・畑作経営編)
(注)原資料の用語を分かりやすく言い換えている。農家数は原資料では経営体数、農業売上は農業粗収益、所得補償は共済・補助金等受取金で、コメの所得補償、水田活用の所得補償、畑作物の所得補償などの合計。農業所得は売上マイナス外部経費で、自家労費+地代+利潤。原資料の面積区分を統合している。数字は農家数で加重平均している。
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バラまきは
そう悪くない

 この事実は、今後TPPへの参加に関して重要な情報をもたらす。TPPに参加して安価な農産物が流入すると日本の農業は壊滅する。農産物価格の下落は大きく、戸別所得補償制度で対応するにしても、莫大な財政支出が必要になる、と言われている。

 まず、このような主張は大げさである。778%の関税がかかっているコメの売り上げは1.8兆円だが、関税率が3~9%に過ぎない野菜の売り上げは2.1兆円である。輸入することがほぼ不可能になるほどの高関税がかかっているものは日本の農業の4割で、残りの6割は平均で20%の生産性上昇か円安があれば競争力を保てる。そして、アベノミクスの第1の矢、大胆な金融緩和のおかげで円は2割以上下落したから、6割の農業については、ほとんど問題は解決している。


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