経済の常識 VS 政策の非常識

2014年1月2日

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原田 泰 (はらだ・ゆたか)

名古屋商科大学ビジネススクール教授

1974年東京大学農学部卒業、博士(経済学)。経済企画庁、大和総研チーフエコノミスト、早稲田大学特任教授などを経て、2015年から日本銀行政策委員会審議委員を5年間務めた。20年4月より現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮選書)など著書多数。
 

 すると、この事業が扱っている売買額は、1040億円、賃貸料は16.8億円である。売買手数料を6%、賃貸手数料を20%とすると、合わせて65.8億円である。せいぜい60億円余りの仕事に1000億円かけるというのが分からない。しかも、1000億円のうちに人件費は入っていない。

 なぜ今までも大した成果を上げていないのに、これからはうまくいくと考えるのだろうか。TPP参加で農業予算が拡大されるとの期待に乗じての予算要求なのだろう。

 そもそもなぜ農地の集積が進まないのか。別に情報が不足しているからではない。中山間地では耕しにくい農地を借りても効率が上げにくい。平らな所では市街化する可能性があり、市街化されれば高く売れるのに、それを農地として安く売るのはまっぴらだからだ。また、中山間地でも、国土強靭化で公共事業用地として高く売れる可能性が出てきた。それでは誰も売りたくない。貸すのなら構わないではないかと思うが、貸した土地が高く売れそうになったら土地を取り戻さなければならない。借主にごねられたら面倒だから貸さないとなる。

 多くの専門家が、農地の転用を禁止すれば高い値段で売れる可能性が消え、農地が賃貸売買されるようになると言うが、私は無理な話だと思う。それに、農地が市街地になるのは、土地の生産性が高まり成長を促す訳で、それを禁止するのは不合理である。また、すべての公共事業が無駄とは思わない。農地の転用を禁止して、必要な公共事業ができなくなれば、経済の効率を低下させる。東日本大震災の復興を早めるためにも、津波の危険性の低い農地を宅地に転用すべきと私は思う。

 転用を禁止するのが良い政策とは思えない。それよりもむしろ、農地を借りている人の権利を弱めれば、転用期待を持つ地主も貸すようになるだろう。地主のみを優遇すべきでないというのであれば、農地の固定資産税を引き上げるべきである。あるいは、水路の管理など農地の保全をしていない地主の固定資産税を引き上げるべきだ。

 成長戦略には怪しげなものが多い。金をばら撒くよりマシな成長政策をしっかりと考えて欲しい。

◆WEDGE2013年12月号より










 

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