電力会社任せにせず国民に是非を問え
このように発電事業者、機器メーカーが生き残りを目指して奮闘する中、国内の風力発電事業を拡大する手だてとして一様に指摘するのが「政府による抜本的な支援策」(三菱総研関係者)だ。その中でまず必要なのが導入目標の設定。政府は10年度までに300万キロワット(08年度188万3000キロワット)まで拡大する方針を掲げるが、その先は未定。この点が太陽光発電とは大きな違いだ。
それ以上にネックとなるのが、90年代半ば以降、推進してきた「電力自由化」とのからみだ。例えば、事業者が電力会社に売電するうえでの障壁となっている系統強化について、「電力会社任せではなく、国の責任で整備してほしい」という声が根強いように、再生可能エネルギーの普及は国策として推進する必要がある。
しかし電力自由化で「普通の会社になった」(業界関係者)電力業界にとっては、いくら国策だからといっても、「プラスにならないことは実行できない」ことは自明の理だ。電力各社が、原子力発電路線を強力に押し進めようとしているのも、コストの安いベース電源として「電力業界は原子力を推進すればするだけメリットが期待できる」(地方電力関係者)からだ。
これに対し、コストが割高な再生可能エネルギーは系統に支障をきたす恐れがあるなど、電力業界にとってはそれほどありがたくはない電源と言ってよい。環境に優しい企業をPRするためには「そこそこの導入は必要」というジレンマもあって、受け入れているにすぎないとの見方もある。
CO2削減は国策だ。しかし、インフラの根幹を担う電力会社は民間企業だ。この構図のもとで、弥縫策を展開しても限界があるのは明白。政府はCO2削減にかかるコストとその負担について国民に問うことが必要ではないか。国民の合意を得ずしては、欧米各国のような思い切った政府助成など電力会社も納得する施策は打ち出せず、それではメーカーも積極的な投資に踏み出せないはずだ。
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