最大手でも世界13位 出遅れる日本勢
風車などプラント機器メーカーも同様に、日本勢は苦戦している。メーカー関係者も「母国市場が拡大しないことにはメーカーも成長しませんよ」(上田主席技師)と表情はさえない。政府が高額の買い取り制度など手厚い振興策を打ち出した太陽光発電で、主要メーカーが積極的な設備投資方針を打ち出していることとは好対照だ。
風力発電プラント産業は1万点に及ぶ部品で組み立てられており、「裾野の広い産業」(佐藤育男・日本製鋼所常務)。中でもベアリングや増速機に使用される歯車など主要部品はメーカーが自動車部品と重なっており、「自動車減産時の昨今では代替先となる」(上田主席技師)。経済産業省も「日本企業のモノづくり力を風力発電事業に生かせば、日本産業の振興にもつながる」と強調するが、世界市場ではデンマークのベスタスをはじめ、米ゼネラル・エレクトリック(GE)など欧米メーカーが席巻、日本勢では最大手の三菱重工がようやく13位に顔を出すにすぎない。
その三菱重工は主力の発電事業部門(原動機)の一角を占める有望分野として、育成に全力投球している。その柱が横浜製作所の旧鉄構工場の風力事業工場への衣替え。発電機や増速機などを収納する主要コンポーネントであるナセルの拠点工場として整備しており、「今後は、これまでの長崎造船所との2拠点体制を構築する」(上田主席技師)と意気込む。風車は長崎と並んでメキシコ、米カリフォルニアの工場でも製造しており、狙いは米国を中心とした海外市場の開拓だ。
原子力発電用圧力容器では世界トップの日本製鋼所も、中核事業である環境・エネルギー分野の柱の1つとして「本格参入」(佐藤常務)を目指している。既に単機2000キロワットの風車の本格的な受注活動をスタートしているが、「増速機や主軸が不要」(同)なことによる低いメンテナンスコストが特徴だ。当面は国内市場を中心に事業を進め、近く島根県江津市で11基、22000キロワットの発電所が運開予定にあるなど受注残は85基に達している。発電機などの調達を含む営業体制は明電舎と提携したが、風車の製造は「一部を中国メーカーに製造委託、コストの引き下げにも注力している」(赤羽博夫・新エネ環境部長)と力が入る。
ヘリコプター用プロペラ技術を転用して風車を開発した富士重工業も日立製作所と事業提携、本格参入を目指し、橋梁など鉄構メーカーの駒井鉄工も単機出力が300キロワットクラスの中小型機を独自開発、市場参入を目指す。中でも駒井鉄工は「橋梁開発用の風洞実験設備を活用して開発した」(駒井えみ・執行役員)もので、風車容量が大型化する中でニッチ市場狙いだ。「離島向けなどの小規模発電設備として生き残りたい」(同)と強調、長崎・上五島向けに5基の受注を内定するなど体制固めを急いでいる。