2024年12月12日(木)

喧嘩の作法

2014年6月19日

 この考え方は、企業だけではなく県などの地方自治体が観光や企業誘致で他県と競争するときにも使える。県の個性を認識させ、県に住む人々に好感や共感をもたせてファンになってもらうことで県のブランド価値があがる。そうなれば県の物産の販売促進になり観光客も増えるであろう。同じことは国の競争にもいえる。国がクールジャパンを推進し観光、投資、日本製品の売り込みで他の国と競争をするときにも使える。県や国も自らの個性があってそこに住む人々への共感が得られればライバルとの競争で最終的に選ばれる。

 しかし先進的な企業がブランドを確立するとすぐにフォロワーがその個性に忍び足で近づいてくる。彼らは先進企業のセカンドブランドのようなふりをして市場に参入しようとする。それは巧妙である。模倣といわれないぎりぎりにマークを似せデザインを似せて、技術的には落ちるが廉価バージョンならいいというレベルに仕上げて市場に入ろうとする。これを放置してしばらく経つと低価格帯のユーザーをごっそり盗られる結果になる。それは企業の盛衰で非常に多く見られるパターンである。このとき認識レベルのステップにいるユーザーは簡単に廉価バージョンに移り、共感レベルは踏みとどまることが多く、ファンたちは逆に熱意をもって一層ブランドに忠誠をつくすようになる。

 ブランド価値と知財価値は同じような意味になるのだが、ブランドマネージメントで知財を使うのは自社の個性にこっそり近づいてきた相手を権利行使により撃退するためである。知財が強固であればブランドは強固である。ブランドを知財そのものとして把握することにより、自社の個性が何であるか、それが強いのかそれとも真似されやすい脆弱なものなのか、ならばどこを個性として伸ばし強化しなければいけないかをはっきりと認識できることになる。

◆WEDGE2014年6月号より









 

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