現在も女性は、家事・育児・介護とさまざまな家庭責任を取らなければなりません。また地域社会の担い手である既婚女性の場合、男性より睡眠時間が短いですし、90年代後半以降、共働き世代が増加しているので、家事育児の他にパート就労している女性が多数派のため、男性より女性のほうが総労働時間は長いと考えてよいでしょう。配偶者控除廃止は中長期的には必要だと思いますが、それによって現在よりも女性が外で働かねばならないということになると、ただでさえ家事育児などの無償労働時間も長い女性たちは、時間的にパンクしてしまいます。そうすると、女性が活躍している町内会やPTAの活動といった地域社会の担い手も枯渇してしまう。
ーー一方で、無頼化し、ひとりで生きている女性たちもいます。しかし、若い女性に目を向けると、専業主婦志向が強いとも聞きます。若い女性たちは、キャリア志向の女性たちを目指さないのでしょうか?
水無田:ちょうど専業主婦志向の強い若い女性たちのお母さん世代というのは、1986年に施行された男女雇用機会均等法世代で、保守的な層と、自分の生き方を尊重する層に別れたと思います。それまでの日本では、多いときで女性が97パーセント、男性が98パーセントの皆婚社会でした。これは結婚以外の選択肢がなかったとも言えます。
選択肢が増えた雇用機会均等法世代以降の女性は、子どもを産むとなると育児環境がまだまだ専業主婦が前提とされていたので、自分の個性やキャリアを尊重したい女性は子どもを産まなくなりました。ですから、あえて結婚、出産を選んだ女性というのは、もともと保守的で、そういった家庭で育った現在の若い女性は、専業主婦志向が強いのではないでしょうか。
ただ、現在特に若い男性は総体的な賃金水準が低下していますから、20~30代の未婚男性で、結婚相手に専業主婦になってほしいという割合は5人に1人しかいません。一方の女性で、専業主婦になりたい割合は3人に1人ですからミスマッチが起こっているわけです。
ーー若い男性の賃金ベースが相対的に低下していて、共働きが増えているにもかかわらず、どうして女性と男性との間でズレが生じているのでしょうか?
水無田:よく結婚に関して男性の収入が話題になりますが、まず日本というのは、所属社会で身分やどこに属しているかということがすごく重要視される社会なんです。女性は、会社に正社員として「所属」している男性と結婚することによって、社会の中や家族の中で「所属」を得られる。でも、男性の賃金水準の低下や就労形態の不安定さなど、女性側から見て「所属」に足ると思う男性が減っていますよね。