2024年12月9日(月)

オトナの教養 週末の一冊

2014年6月6日

 安倍政権は「女性が輝く日本」をつくるために、「待機児童の解消」「職場復帰・再就職の支援」「女性役員・管理職の増加」などの政策を掲げている。しかし、一方で、若い女性の専業主婦志向が強まっているとの報道もある。現在、女性は雇用や結婚、出産、家庭などでどのような状況に置かれているのか。『無頼化した女たち』(亜紀書房)を上梓した立教大学社会学部兼任講師の水無田気流氏に、女性たちの今、そして男性が抱える問題についても話を聞いた。

ーー今回の本は、09年に出された『無頼化する女たち』(洋泉社)を収録し、さらに前作以降の女性の社会状況についてまとめられました。

『無頼化した女たち』
(水無田気流 著、亜紀書房)

水無田:前作では、主に80年代以降の女性を取り巻く動向を中心に書きました。今回は、そういった社会史的なものを踏まえつつ、震災以降の新しい考察を加えました。

 前作では、無頼化する状況、つまり女性が人を頼らずにひとりで生きていくことを前提とした社会が積み上げられていることを指摘しました。それが震災当時の「絆」の大合唱で少しは変化するのかと思ったのですが、結局「絆」はそんなに強まりませんでした。

 たとえば、婚活をする男女は増えたけれども、婚姻件数自体は戦後過去最低を更新しましたし、少子化も歯止めがきかない。震災前からあった傾向がより極端になったと言えます。そこで、本のタイトルも前作が無頼化「する」だったのが、今回は無頼化「した」となり、女性はますます無頼化していると。

 また、男性の生涯未婚率(50歳になった時点で一度も結婚していない人の割合)も、前作当時では16パーセントと高かったのですが、あっという間に2割を超え、孤立している。特に男性の場合、会社村の住人になってしまっているので、退職してみないと、いかに自分が孤立しているかに気が付きにくい面がありますね。

ーー09年以降の女性の雇用環境はどう変化したのでしょうか?

水無田:男女ともに非正規雇用化は進んでいて、これまで、女性の非正規雇用は中高年と若年層が中心でしたが全年齢階層で進んでいます。女性では、非正規が過半数を占めています。たとえば、正社員の女性も結婚を機に半数が離職するかパートタイマーや派遣に働き方を変え、残りの半数も出産を機に仕事を辞めたり、働き方を変えたりすることが影響しているからでしょう。結果的に、正社員として子どもを産んで、そのまま残り続ける女性は実質的に25パーセント程度しかいないこととなります。


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