ーー保守的な女性と、無頼化した女性の対立を強調するような議論も時折見かけます。
水無田:無頼化と保守化は、一見両極端に見えますが、これは社会が不安定なことの証左ですよね。今回の配偶者控除の廃止や第3号被保険者見直しなどを見てもわかるとおり、女性のライフスタイルというのは社会の過渡期に緩衝材として使われがちなんです。
配偶者控除がなぜ高度成長期に考えられたかというと、この制度が導入された60年代頃までは、農林漁業などの第1次産業から第2次産業への転換期だった。第1次産業の農家では、お嫁さんも貴重な労働力ですから、みんな働いていましたが、製造業や建築などの男性向けの職場とも言える第2次産業が伸びていた頃には、男性を支える妻が奨励されたからなんです。
質問にもあった保守的な女性と、無頼化した女性の対立のように、ここ1、2年、私自身、働く女性と専業主婦の税制問題や、ママ友カーストなどの取材を受けることも多くなりました。女性同士の論争というのは、昔からありますし、男性中心のメディアでは、女性同士の論争は高みの見物ですからおもしろいというのがあるんだと思います。そういう女性同士の戦いのように煙幕を張って、実際には女性を社会に都合の良い形で動員しようという有形、無形な力は働いていますから、女性もいい加減そういった手に乗らないで欲しい。ただ、女性が社会の問題に目が向くと困るというのもありますし、女性自身もそういった問題に目が向きづらい。なぜ女性が社会に目が向かないかというと、社会性のある女性がモテなくなるからなのではと(笑)。
ーー一方の男性については、お話のはじめの方で「孤立」しているという指摘がありました。
水無田:OECD報告では、日本の男性は世界で一番孤独と言われています。仕事以外の人間関係が他国と比べて、圧倒的に少ないからなんです。そうすると、引退後の人生がすごく辛く、居場所がないですし、幸福かどうかという問題にもなります。
また現在、男性の生涯未婚率は2割を超えており、現在20歳くらい若者の3人に1人は生涯未婚になるだろうとも言われています。男性の未婚率が上昇しているということは、未婚のまま老親2人を介護しなければいけない男性が今後急増する可能性があることを示しています。そうなると、まだ働き盛りにもかかわらず、介護のために仕事を辞めなければならなくなったり、生活保護の世話になる男性が増える可能性があります。