2024年12月27日(金)

World Energy Watch

2014年6月9日

再エネ導入は電力会社を苦境に追い込む

 EUでは再エネ導入量の増加により、火力発電所の稼働率が低迷し、電力会社が設備を維持することが困難になってきた。このために、英国、ドイツなどでは、設備を建設すれば稼働率に関係なく一定額を支払う容量市場の導入により設備量を確保する動きがでている。EU委員会も4月に発表したエネルギー・環境政策の政府補助金に関するガイドラインの中で容量市場導入を認めている。

 再エネが増加したために問題が発生しているのは、米国も同様だ。FITはないが、風力発電については、連邦政府からの補助金があり、13年末までに建設された設備には発電量1kW時当たり2.2セントが支払われる。このため、風力発電設備の事業者は需要がない時にでも発電を行えば、この金額を受け取れる。卸市場価格がゼロでも損はしない。風力の発電量が多いテキサス州の卸電力市場では、風が強いが需要がない夜間には電力価格がマイナスになることも生じ始めた。常に発電を行っているベース電源の石炭火力と原子力を保有している電力会社は大きな損失を被ることになる。

 電力会社に、さらに追い打ちをかけたのはシェール革命だ。08年から天然ガス価格の下落が始まったが、シェールガスの生産地テキサスでは天然ガス価格は全米平均よりもさらに安い。ベース電源は、燃料価格が大きく下落した天然ガス火力とも競争することが困難になった。

 テキサス州ダラスに本拠を置く、石炭と原子力を主体に発電を行っているエナジー・フューチャーは、負債の返済に行き詰り、4月末に米国の連邦破産法11条に基づく会社更生を申請することになった。ウォーレン・バフェットが同社の社債を購入しており、9億ドル近い損失を被っていたことが同社破産の過程で明らかとなった。

投機対象になった電気事業でバフェットも大損

 米国では、被買収企業の資産とキャッシュフローを担保に資金調達を行うレベレッジドバイアウト(LBO)と呼ばれる買収方法がある。これから買収する相手の資産を担保に資金調達を行うので、買収者は大きな資金を用意する必要はない。名前の通り、梃子の力(leverage)の原理で資金調達し、買収を実行する。

 買収に成功すれば、被買収企業を非上場にし、資産売却、事業内容見直しなど様々な工夫により企業価値を上げた上で、再度上場を行う。うまくいけば、当初投じた資金は数十倍になるし、数百倍になったケースも80年代にはあった。エナジー・フューチャーは、史上最大のLBOにより07年に買収された企業だ。多くのLBOを手掛けたKKR、ゴールドマンサックスなどが80億ドルの資金を用意し、新たにエナジー・フューチャーが400億ドルの資金調達を行った。


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