景気の腰折れを防ぐために
こうしてみると、消費はいったん4月に落ち込んだが、これはほぼ想定の範囲内というイメージがうかびあがって来る。しかし各紙とも、先行きへの警戒感を解いている訳ではない。毎日新聞は5月31日付紙面で「ぬぐえぬ腰折れ懸念」と指摘し、今年の春闘でベアが相次いだものの、4月の勤労者世帯実収入は前年同月と比べて3.3%減少しており、「負担増も予想される中、賃上げを伴わないと家計は物価上昇の重みにつぶれる」と警告した。同日付の朝日新聞も「家計の節約、想定以上」として、家計支出の落ち込み幅が97年と比べて大きい中で、節約の動きはしばらく続く可能性があり、消費の落ち込みが長引くかどうかは、家庭の収入が賃上げなどでどの程度増えるかがカギになるとしている。
これまでは一種のお祭り気分もあって、様々なキャンペーンなど消費を失速させない取り組みが小売業などの現場で展開されてきたため、消費者が本格的に「増税感」を意識し始めるのはこれからともいえる。景気が腰折れしないために、政府が切れ目ない対策を打つ必要があるのはもちろんだが、企業側にも物価上昇に対応する賃上げを行うなどの努力がこれまで以上に求められている。増税と消費をめぐる一連の報道は、そうしたメッセージを世の中に送り出す役割を果たしているのではないかと思う。
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