2024年4月20日(土)

日本の漁業は崖っぷち

2014年6月27日

・漁獲枠の配分方法:
資源が低位の時は、小型船(沿岸漁業)への割り当て比率を高くして小規模の漁業者を保護するのが基本です。一方で、沖合漁業は資源が回復していく局面では、漁獲能力が高い大型船への割り当てを増やしていきます。ノルウェーでは、小型船の所有する漁獲枠は中型船や大型船に譲渡できないようにしてあり、地域と沿岸漁業を保護しています。

 漁業先進国(ノルウェー・アイスランド他)へアドバイザーを依頼するのも不可欠です。漁獲枠の総量自体は、効果がない過大な枠は避けて「控えめな数量」とし、TAC=漁獲量の原則となること。漁獲能力の高い、沖合での巻き網の数量をまず管理して資源回復することが、沿岸に回遊した魚を獲る漁業者にも好影響を与えるのです。尚、大きな個別割当は、何の効果もないばかりか、有害です。

図2 ノルウェー北部の漁場 カラフトシシャモ漁獲の際にマダラが混獲された ため赤い部分は禁漁区となる。VMSをつけているので証拠が残り、漁船は違反しない。

・違反者への罰則:
違反者には、巨額の罰金、漁業権剥奪を含む厳しい罰則規定を設けることが必要です。「魚がいたので獲りたい、獲れてしまった」ではなく、漁業者が「割り当て以上の漁獲は、資源の持続性のために絶対にしてはいけない」という強い意識を持つことが必要です。ノルウェーは、ニシンの乱獲により資源が激減し、それを20年以上かけて資源管理により回復させました。個別割当数量を守らないことは犯罪です。罰則がない、もしくは甘ければ資源回復は決して進みません。混獲の規制も徹底し、混獲の恐れがある漁場からは漁業者自らが漁場を変えさせることが必要です。ノルウェーでは混獲や許容される混獲率(10%等)を厳しく管理し、禁漁区を設定することもあります(図2)。漁業者の方から混獲漁場を避ける仕組みができています。

・オブザーバーは高くつく?: 
2008年の水産庁による報告では、437億円かかるという試算がでました。検査官人件費3人×597港と3808隻分の検査官人件費が必要という試算でした。ノルウェーのオブザーバーに関しても、大きな間違いが伝えられているようです。筆者は現地で乗船しているオブザーバーのことなど聞いたことがないのでノルウェー青物漁業協同組合に確認したとこころ、青物類(サバ・ニシン等)の漁獲に対し、検査官は5人とのことで、乗船は基本的にしておらず、水揚げ地での検査が主とのことでした。

 また、40億円もする巨大な巻き網船でも、乗船者は10人前後。資源管理の重要性に関する国民理解のレベルが違うということもありますが、自動計量器を通じて水揚げするのでごまかしようがありません。水揚げ場所では、検査官が自由に立ち入り検査をします。15メートル以上の漁船には、VMS(衛星通信漁船管理システム)が付いているので、どこで水揚げされたのか、混獲等により禁漁区とした漁場で漁をしていないか、証拠となるので違法なことはできません。海上投棄は禁じられています。漁船にカメラをつけて管理することもできる時代なのです。


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