2024年4月17日(水)

日本の漁業は崖っぷち

2014年6月27日

・ITQ方式(譲渡可能個別割当)について:資源管理のあり方検討会の資料に基づき少し解説します。

「割り当てが私権化することでTACやITQの削減が困難になり、資源管理の改善に好ましくない影響を及ぼす」
→そんなことは起こりません。TACやITQの増減は、その年の資源状態により変わるだけです。ITQとして持てるのは、何トン分という絶対量ではなく、比率による割り当てです。資源が多い年にはTACが増え、少ない年には減り、ITQは自分の持つ比率により増減するだけです。

・新規参入者等に対するコスト増への対処: 
そもそも、現在の資源管理状態で新規参入者がいるか、ですが、現実的なことを言えば、個別割当に対し、撤退する漁業者は、これを売り、既存の漁業者、新規参入者が枠を買い取るということでバランスが取れます。また、有効期限は20年等期限を設けるべきです。現在の日本の漁獲枠は実際の漁獲枠より大幅に多い(第14回参照)、世界の常識とかけ離れたものですので、これを、信用を得られるまともなものにしていかねばなりません。

・漁村への影響:
アイスランドのウェストマン諸島(第6回参照)、ニュージーランドのチャタム島等、個別割当(ITQ=譲渡可能漁獲割り当て)での資源管理は離島にも経済的に好影響を与えています。漁獲枠の割り当てに際しては、漁村への枠を優遇し、地域に若者を呼び込み活性化させる潜在力を持っています。小規模の漁業者に対して、漁業協同組合に枠を配布し、その中でさらに漁業者に枠を割り当ててもらうやり方も有効です。漁村社会の衰退に重大な影響を与えてきたのは、これまでの日本のやり方であり、上記の2つの島の例は、ITQが、逆にイノベーションを起こして良い結果をもたらしたことを示す例なのです。

 机上の空論ではなく、世界の漁業を自分の目で見て、そして日々、実際に携わっていると、個別割当の効果、特にITQの資源の持続性、漁業経営へ絶大な効果を発揮していることがわかります。7月1日に行われる第5回の資源管理のあり方検討会での、事実と現実に基づいた話し合いに期待します。

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