2024年4月23日(火)

不況を生き抜く管理会計

2009年6月12日

 前回も説明したホテルや航空運賃の値下げ。最近、格安の海外旅行を目にすることが多くなった。そのチラシをよく見てみると、ビジネスマンは行くことが出来ない平日のツアーであることが多い。この不景気で仕事は今までにも増して忙しくなっているというのに、平日に旅行に行ける人は少ない。

 旅行会社からすれば、平日の旅行は客が少なくてキャパシティが余っているからこそ、大幅に値下げしても集客したいのであろうが、向こうにそう言われても平日に長期休暇をとるのは難しいという客側の事情がある。

 また家族旅行ともなれば、平日に出かけるためには子どもの学校を休ませないといけない。・・・・白状すると、私は昔、小学生の子どもを休ませて海外に出かけたことがある。「おじいちゃんの○回忌」という理由をつけて。そのあと、○回忌のはずの子どもが真っ黒に日焼けして学校に戻り(しかも冬)、バレバレで恥ずかしい思いをした。悪いことはできないモノです。

 結局、仕事が忙しく、子どもを学校に通わせている一般のビジネスマンは、平日の旅行がいくら格安でも出かけにくい。料金が高いことに不満を感じつつもGWやお盆、年末年始にしか旅行にいけない。こうした「お客の事情」が旅行会社の「値下げによって販売数量(Q)が大幅に増加すること」を阻んでいるわけだ。

音楽会社の成功を阻むもの

 最近、音楽CDの値下げも目につく。かつての名盤が安くなって売られていたり、あるいは「3枚買うと10%OFF」という売り方も目立つようになってきた。

 もともとCDは原材料費など変動費の安い商品なので、成功条件1「商品1個当たりの変動費が少ないこと」はクリアしている。問題はやはり成功条件2の「値下げによって販売数量(Q)が大幅に増加すること」だ。

 音楽という商品は嗜好品と呼ばれる。個人の好みが大きく反映される趣味の品ということだ。アーティストのファンは値段に関係なく、すでにCDをもっている。いまさら値下げしたからといって新たなファンがどれだけ増えるであろうか?嗜好品のCDの場合、そうそう新たなファンは増えないだろう。「安いから買おう」というにわかファンの数は少ないはずだ。

 それに加えて、音楽CDの値下げが大量の販売数量増加に結びつかない決定的な理由がある。それは「CDは1枚もっていれば十分」という事実。いくらストーンズが好きなファンであっても、「お、ストーンズのCDが値下げだ。5枚買って帰ろう」という人はいないのではないか?商品の特性上、音楽CDは自宅に1枚あれば十分なのだ。こうした販売制約が「お客の事情」だ。

 こうして考えてみると、前回まで取り上げたマクドナルドの100円バーガーが大量に売れたというのは、いくつかの条件が揃ったうえでの奇跡にすら思えてくる。


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