(左から)デンマークのメッテ・フレデリクセン首相、欧州理事会のアントニオ・コスタ議長、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が、首脳会議の終わりに合意内容を発表した(19日、ブリュッセル)
凍結したロシア資金をウクライナの支援に使うかどうか協議していた欧州連合(EU)の首脳は19日、ロシア資産の利用でまとまらず、代わりにウクライナへ900億ユーロ(約16兆4500億円)を融資することで合意した。
EU首脳たちはブリュッセルで1日以上にわたり協議した後、今後2年間のウクライナの軍事・経済的ニーズを満たすものだとして、融資合意を発表した。
欧州理事会のアントニオ・コスタ議長はソーシャルメディア「X」に、「合意がまとまった」、「私たちは約束した。私たちは結果を出した」と書き、EU共通予算で裏付けられた融資を提供する合意を発表した。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、2000億ユーロの凍結ロシア資産の活用をEU首脳に求めていた。しかし、資産の大部分を保管するベルギーは責任の分担について他のEU加盟国に保証を要求。それは、他国には受け入れ難い条件だった。
ベルギーのバルト・デウェーヴェル首相は19日早朝、凍結ロシア資産を使うのではなく、資金借り入れを通じたウクライナ融資を選ぶことで、EUは「混乱と分裂」を回避したと歓迎した。「我々は引き続き、団結している」と首相は述べた。
ウクライナは数カ月以内に資金が枯渇する見通しで、EU首脳会議に出席したゼレンスキー大統領は、春までに資金注入がなければウクライナは「ドローンの生産を減らさざるを得ない」と述べていた。
EUは、ウクライナが破綻を避けるためには今後2年間に追加で1350億ユーロが必要だと見積もっている。現状では、資金難は来年4月に始まる見込み。
凍結ロシア資産の利用を推進していたドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、融資に関する最終決定は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に「明確なシグナルを送る」ものだと述べた。
ロシアはEUの指導者らに対し、ロシアの資金を使わないよう警告している。一方、ポーランドのドナルド・トゥスク首相は、EUは「今のこの事態に対応」しなくてはならないと呼びかけていた。
ロシアの戦争終結に向けて、ドナルド・トランプ米大統領は迅速な合意を求めている。その流れで各国の外交が活発化する中、今回の合意はウクライナ政府へ、切実に必要な命綱を提供するものだ。
ホワイトハウス関係者がAFP通信に話したところによると、アメリカとロシアの当局者は今週末、米フロリダ州マイアミで和平案に関する追加協議を行う予定。会談には、クレムリン(ロシア大統領府)のキリル・ドミトリエフ特使、アメリカのスティーヴ・ウィトコフ特使、そしてトランプ氏の義理の息子ジャレッド・クシュナー氏が参加するとみられている。
ゼレンスキー氏は、ウクライナとアメリカの代表団が19日と20日にアメリカで新たに協議すると発表した。ゼレンスキー氏によると、ウクライナを再侵攻から守るため、アメリカがどのような保証を提供できるのか、ウクライナ側はその詳細を求めている。
他方、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ヨーロッパがロシアのプーチン大統領と再びかかわっていくことは「有益」だと思うと発言した。
「協議再開のための適切な枠組みを見出すのは、ヨーロッパとウクライナの利益にかなうことだと思う」とマクロン氏は述べ、ヨーロッパは「今後数週間の内に」その手段を見つけるべきだと話した。
(英語記事 EU agree €90bn loan for Ukraine but without using Russian assets)
