2026年1月9日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年1月8日

 2025年12月10日付フィナンシャル・タイムズの社説は、中国の貿易黒字1兆ドル突破は中国の産業力と西側の漂流を際立たせ、双方にとり貿易不均衡が維持困難になりつつあると述べている。

(Diy13/gettyimages・ロイター/アフロ)

 製造業や技術の覇権確立を目指す中国は、2020年代初頭には、日独を抜いて世界最大の自動車輸出国になった。今年1月には、杭州のAI企業ディープシークが低コストで独自の大規模言語モデルを発表し、米国のビッグテックを驚かせた。中国のモノの貿易黒字が、2025年11カ月で過去最高となる1兆ドルを超えた。

 これは中国の産業戦略の規模と有効性を改めて示している。中国は、レアアースから電気自動車やグリーン技術など高度な技術製品に至るまで、需要の高い財を大量に供給してきた。その結果、米国の近年の貿易障壁にもかかわらず、中国は欧州や新興国など他の市場への進出に成功している。

 しかし、この黒字の大きさ自体が、中国経済に内在する歪みを浮き彫りにする。国内需要は依然として弱い。家計は不動産部門の低迷による影響に苦しみ、政府の景気刺激策も消費支出の回復に至っていない。その結果、中国の産業は、膨大な生産量を捌くために益々海外需要に依存する。

 多くの国が、安価な中国製品の輸入が自国の製造業の基盤に脅威を与えることに警戒を強め、中国が外国の消費者にアクセスできる余地は狭まる恐れがある。先の訪中後、フランスのマクロン大統領は、対中貿易不均衡の拡大に対処するために、欧州連合(EU)が米国に倣って「強力な措置」を取らざるを得なくなると警告した。

 この1兆ドルという数字は、西側諸国を警戒させる。それは、西側の生産力が後れを取り、中国が重要な分野や技術において大きな力を得ていることを浮き彫りにする。


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