2026年1月10日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年1月8日

 中国は常に不公正貿易慣行の非難を受けるが、一方で西側諸国の立場は弱体化した。欧州は、競争力向上に必要な規制緩和やエネルギーコストの引き下げ、技術導入の加速化に出遅れた。

 中国の過大な貿易黒字は、黒字国と赤字国双方への警告だ。中国にとっては、過剰生産によるデフレの連鎖を回避するためだけでなく、外国の消費者への依存度を下げるためにも、国内需要の回復が緊急に必要だ。

 一方、欧州にとっては、長期的な貿易・産業戦略の構築が必要だ。中国によるダンピングや安全保障上のリスクが明らかな場合には、迅速かつ協調的な対抗措置も必要である。

 中国の貿易黒字の1兆ドル突破は、中国の産業力と西側諸国の漂流を際立たせるが、それ以上に、双方にとって貿易不均衡が今まで以上に維持困難になりつつあることを突き付けている。

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貿易不均衡は黒字国と赤字国双方の問題

 社説の主張は、正論である。特に、この社説で良いことは、中国の過大な貿易黒字は貿易黒字国(中国)と赤字国(欧米日等)双方の問題だということと、それは「双方にとって、今まで以上に維持困難」になっていると主張することである。全くその通りだ。

 中国の過大な貿易黒字は世界経済のシステム規模のグローバルな問題になり、問題解決のためには黒字国と赤字国の共同作業が必要だとの視座が不可欠だ。トランプの貿易政策には斯かる視座が欠如している。

 トランプは、中国問題を、「米国第一主義」や取引、それも小さな具体的産品の問題としか捉えていない。中国とて、「米国第一主義」や米中貿易戦争のために妥協はしないだろう。

 社説が言うように、貿易不均衡は黒字国と赤字国双方の問題であり、米中を含む主要国はかかる視座を共有すべきだ。それができて初めて、交渉の土台ができるのではないか。それなくしては、中国に限らず、他の国も妥協できないだろう。

 案の定、中国は4月以降、まず米国の措置に報復措置を取ることにより、立場を対等にし、その後交渉で双方とも措置の引き下げや撤回で妥協したように見せ、時間を稼いでいる。しかし中国は何も譲歩していないし、問題は何も基本的に変わっていない。

 中国は巧みな交渉をしている。トランプが対中交渉の視座と手法を根本的に変えねば、問題は解決しない。そして、問題は米中に限らず、世界的なものになっている。


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