2025年12月24日(水)

BBC News

2025年12月24日

イギリス政府は22日、イングランドにおける動物福祉基準を改善するための一連の計画を発表した。劣悪な環境での犬の繁殖やトレイルハンティングを禁止するほか、養鶏場でのケージの使用を終了させる。出産・授乳期間の母ブタを囲う分娩(ぶんべん)用のおりも、使用をやめさせる。

トレイルハンティングとは、自然の匂いを染み込ませた布を使い、狩猟の前に「匂いの跡(トレイル)」を敷き、それを猟犬が追うもの。だが、猟犬の群れが生きた動物の匂いを拾って追いかける可能性がある。

エマ・レイノルズ環境相は、一連の改革案は「一世代で最も野心的な動物福祉戦略だ」と語った。一方、最大野党・保守党は、与党・労働党がイギリスの農村地域を顧みていないことを示していると非難した。

政府は、新たな戦略を2030年までに実施することを目指している。

レイノルズ環境相は、「すでに動物園の基準改善、子犬の密輸防止、家畜を犬の攻撃から守る措置などを講じてきた。そして今回、めんどりをケージに閉じ込めることや、残酷なわな、トレイルハンティングを禁止し、福祉水準の低い犬の繁殖を抑制する計画だ」と述べた。

新しい動物福祉戦略では、利益を最大化するために犬を劣悪な環境で飼育し、年間に複数回出産させるパピー・ファーミング(子犬工場)が禁止される。

動物の権利活動家は、こうした行為が子犬に長期的な健康問題を引き起こす可能性があると指摘している。

現在のイギリスでは、多数の犬を繁殖させることは違法ではない。イングランド、ウェールズ、北アイルランドでは、1年に出産3回分以上の子犬を販売する繁殖業者は、免許取得のための検査を受けなければならない。

政府は、すべての犬の繁殖業者を対象とする新しい登録制度の導入と、免許取得における健康および福祉基準の改善について、協議を開始するとしている。

王立動物虐待防止協会(RSPCA)は、パピー・ファーミングの禁止が「真の変革になり得る」と述べ、「抜け穴がないようにする」ため、法案作成で政府と協力するとしている。

政府はまた、農村地域でわなの使用を禁止することを検討しているほか、2026年にトレイルハンティング禁止法案に関する協議を実施することを明らかにした。

レイノルズ環境相はBBCに対し、労働党は2004年にキツネ狩りを禁止したものの、「一部では、トレイルハンティングを使ってその禁止を回避しようとする動きが見られる」と述べた。

「当然、これは法執行の問題でもあり、単なる法律の問題ではない。しかし我々はさらに踏み込む決意をしている。トレイルハンティングの禁止を動物福祉戦略に盛り込んだのはそのためだ」

一方、フィールド・スポーツ団体「カントリーサイド・アライアンス」のティム・ボナー代表は、政府が議会の時間を狩猟問題にさらに費やそうとしているのは「信じられない」と述べた。

「この無意味で分断的な問題を再び取り上げることは完全に不要だ」

「地方の人々は、労働党が家族経営の農場を攻撃し、農村地域を軽視した後に、トレイルハンティングやキツネ駆除に使われるわなの禁止を政治的優先事項と考えていることに衝撃を受けるだろう」

保守党のケヴィン・ホーリンレイク幹事長も、この禁止を「イギリスの農村と文化への攻撃」と呼び、政府が「合法的なトレイルハンティングを支持し、法を守っている多数派を罰している」と非難した。

養鶏・養豚分野でも改善へ

新戦略はこのほか、「ケージを使わないシステムへの移行と、強化型『コロニー』ケージの段階的廃止に関する協議」を行うとしている。コロニーは、複数のニワトリを収容するケージを指す。

さらに、畜産業界と協力し、ブタの「分娩用おりの使用から代替システムへの移行方法を検討する」としている。このおりは、子ブタが母ブタに押しつぶされるのを防ぐためのもの。

政府はこうした「拘束システム」の廃止に加え、物議をかもしている、急速に成長する品種のニワトリの禁止も検討している。動物福祉活動家らはこうした品種を、イギリスのホラー小説に出てくる怪物にちなんで「フランケンチキン」と呼んでいる。

動物福祉団体「コンパッション・イン・ワールド・ファーミングUK」のアンソニー・フィールド代表は、政府が「家畜の福祉水準を引き上げている」と述べた。

イギリスではすでに、ニワトリを1羽ずつ入れる採卵用バタリーケージは禁止されており、RSPCAの推定によると、ニワトリの約80%が平飼いだという。

RSPCAの公共政策責任者を務めるデイヴィッド・ボウルズ氏は、残り20%のニワトリをケージから解放することは「大きな商業的問題にはならないはずだ」と語った。

全国農業者連合(NFU)のトム・ブラッドショー会長は、輸入食品がイギリスで合法とされる基準より低い水準で生産されないよう、政府に求めた。

ブラッドショー会長は、一連の改革により、イギリス農家が世界中の安価な商品と不公平な競争をする可能性につながると警告。「国内の生産システムに導入したい変更を輸入基準にも反映しなければ、結局は産業を海外に輸出するだけだ」と、BBCラジオ4で語った。

英環境・食料・農村地域省は、「食品基準を引き下げることはない。貿易方針の一環として、高い動物福祉基準を維持する」としている。

さらに、「海外産品が不当な優位性を持つかどうか、そしてその影響を常に検討する」と付け加えた。

イギリスの全国養豚協会は、分娩用のおりに関する「次の段階を注視する」とし、より柔軟なシステムへの移行を自らも検討していると述べた。

英家禽(かきん)協議会には、BBCがコメントを求めている。

(英語記事 Hen cages and pig farrowing crates face ban

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c246my04ed2o


新着記事

»もっと見る