2026年1月10日(土)

新しい〝付加価値〟最前線

2026年1月10日

かつては、石油ストーブで沸かすやかんのお湯が湿度を与えてくれていたが(Marser/gettyimages)

 冬の家電量販店。空調家電売り場には、加湿器がずらりと並ぶ。デモで、盛んに水煙をあげているモデルもある。遠目、湯気のようにも見え、冬の風物詩にあげる人もいるくらいだ。だが、この何気ない日常風景が、問題になっているとしたら、どう思われるだろうか。

 冬になると毎年のようにインフルエンザが流行する。

 厚生省のホームページには、インフルエンザ予防に効果があるものとして、1)流行前のワクチン接種、2)外出後の手洗い等、3)適度な湿度の保持、4)十分な休養とバランスのとれた栄養摂取、5)人混みや繁華街への外出を控えるの5つがあげられている。

「空気が乾燥すると、気道粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。特に乾燥しやすい室内では、加湿器などを使って適切な湿度(50~60%)を保つことも効果的です。(原文ママ)」とコメントされている。

 湿度はウイルスの生存率を大きく左右する。1961年にはインフルエンザウイルスと湿度・温度の関係が発表されている。6時間後のウイルスの生存率が、20〜25%の低湿の場合、7〜8℃で60%以上が生存する。そして、20.5〜24℃、湿度:20〜25%だと生存率:60%以上、49〜51%だと、生存率:10%以下と一気に落ちる。

 低温低湿の冬場、インフルエンザが流行するのは、ウイルスが生存しやすいからだ。だから冬場は加湿なのだが、その一方、厚生省のホームページには、エアロゾル(気体中に浮遊する微小な液体や固体の粒子のこと)感染するレジオネラ症のQ&Aに「超音波振動などの加湿器を使用するときには、毎日水を入れ替えて容器を洗浄しましょう。レジオネラ属菌は60℃では5分間で殺菌されるので、水を加熱して蒸気を発生させるタイプの加湿器は感染源となる可能性は低いとされています。(原文ママ)」

 と書かれている。これはどう言う意味なのだろうか?

コロナ禍の教訓、正確な知識が必要

 新型コロナウイルス感染症の世界的流行(2019〜2023)に伴い、感染症、ウイルスに関していろいろな医学情報が溢れ、一部常識と化した。感染経路などもその1つ。今では、多くの人が「空気感染」「飛沫感染」「接触感染」という感染経路のうち、コロナは飛沫感染と接触感染で感染。飛沫感染はマスクで、接触感染は手洗い、アルコール消毒で対応できることを知っている。

 だが、実はそれ以外に「エアロゾル感染」などがある。エアロゾル感染は、空気感染と飛沫感染の間に位置する感染。空気、エアロゾル、飛沫の差は、病原体が、どのくらい空中に浮いていられるかと考えればよい。空気感染ずっと浮いたまま、飛沫感染はかなりの早く床に落ちる。エアロゾルは中々床に落ちてこない。

 それらの感染症の原因、ウイルスの生存は、湿度により状態がかなり変わるのは前述の通りだが、何を使って加湿するのかによっても違いが出る。加湿器は「水蒸気」を使い加湿するモデルと「水粒(エアロゾル)」を使って加湿する2つのモデルがある。

 水蒸気は皆さんもご承知の通り、水の気相状態。また湿度というのは空気中の水蒸気がどのくらいあるのかを示したものだ。加湿に水蒸気というのは理に叶っている。

 一方の加湿器に使われる水粒は、径5μm以上。質が悪いほど、大きくなる。そして、径5μmというのは人が吸って体内に取り込むことができるギリギリのサイズ。水の実感はないが、喉は潤うということだ。この水滴は超音波で作られるため、このモデルは「超音波式」と呼ばれる。

 レジオネラ菌は長さ2〜20μm、幅0.3~0.9μmの細菌で、水環境を中心とした生活環境に存在するので、加湿器の作り出す水粒の中に入り込み、水粒に保護された状態で、人の体に侵入することができる。

 厚生省が指摘しているのは、この人為的なエアロゾル感染を防ぐこと。だが、不親切。丁寧に理詰めで説明しないと、わかりにくい。

加湿器の衛生とは

 衛生的な加湿器と言うのは、使用する水の中に黴菌(カビの胞子と細菌)がいないことをいう。これは水を使う他の家電も共通している。で、そんな水が簡単に、安く手に入るのか?

 水道水がそれだ。体を壊さないよう、塩素で消毒されているので、黴菌などはいない。安全のため塩素消毒しているが、塩素は空気に放出される。金魚を飼うときに行うカルキ抜きだ。その間、1日。以降はただの水。空気中の黴菌は水に入り込み、繁殖を始める。

 水は毎日取り替えるのがセオリーというのはこのためだ。

 加湿器で水に関係あるところは3カ所。使う水を貯めておく「水タンク」。そして、その水を展開、水蒸気化する気化フィルター、もしくは超音波ユニットがある「水トレイ」。「気化フィルター」自体も水があり空気と触れているので黴菌が繁殖しやすい。だが、水蒸気は水分子であり、サイズ的に黴菌が取り付くことはできない。

 水タンクは、古い水を新しい水道水を入れ替えればOK。水はまとまっているし、難しいことではない。

 問題は水トレイ。こちらは複雑な形状をしている上に、水の動きはほとんどない。つまり淀んだ状態。昔より、「淀む水に芥(あくた)たまる」と言われるが、ここに数日おくと水垢がすぐ付く。水垢と言われるのは、水の中の黴菌が出す粘着物。繁殖に伴い出てくる老廃物だ。

 水トレイは、抗菌樹脂で作れば大丈夫と思う人がいるかもしれない。確かに抗菌樹脂で使われるAg+(銀イオン)はちゃんとした抗菌効果を持つ。だが、抗菌樹脂で作られたトレイの中でも黴菌は繁殖したりする。Ag+の濃度が一定以上なければ、弱いところから繁殖する。一度取り付くと、そこを橋頭堡として勢力を拡大して行く。

 こうなると小まめに洗うしかない。厚生省が言っているのは、このためだ。だが、水タンクと違い、水トレイはほとんどの場合、洗いを考慮した作りになっていない。水量操作のため必ず凸凹があるので、洗いやすくできないと考えているからかもしれない。

 加水して使わないエアコンでも、空気中の結露を集める排水トレイの水とフィルターのホコリでカビが生える。それより多い水を持つ加湿器は、よりきちんとすることが大切。

 ところが、わかっていてもなかなかできないのが実際。この問題に加湿器メーカーも本気で取りんだ。2025年、主な技術が出揃ったのでご紹介したい。

超音波式加湿器の位置付け

 超音波式加湿器の特徴は4つある。

 1つ目は超音波ユニットが小型軽量なため、「設計・デザインの自由度が大きい」ことだ。大型の気化フィルターを持つことも不要だし、熱湯も使わないので、安全性にこだわった転倒時も漏れないフタも必要ない。また、加湿器は一種のオブジェでもあるので、この自由度はとても重要だ。カドー社など思い切ったデザインで仕掛けてくるメーカーにこの自由差はとても重要だ。

 2つ目は、「スィッチ入れたらすぐ、最大能力での加湿が可能」なこと。カラカラの外から帰ってきた時は、とても便利だ。3つ目はあの派手な「水煙」だ。らしい見た目というのは、実際に効果があるのと同様に重要。4つ目は超音波デバイスが「安い」ことだ。要するに、超音波式はユーザーが満足しやすいモデルを安価に作れるということだ。ただそれは、ユーザーが衛生を確保してくれればという条件付きだが。

カドー、熱で殺菌

カドー STEM700i

 その優美なデザインで人気があるカドーの加湿器は、超音波式。「STEM 700i」が代表モデルだが、国内はもとより、海外でも人気が高い。その進化系、超音波式の欠点をなくしたのが、オートクリーン加湿器「STEM 500H」だ。上の透明部は水タンク、下の不透明部が水トレイになってそれが上下につながっているデザイン。

カドー STEM500H

 上のタンクは、水を残さず1回で水替えできる仕様。下トレイは、小ぶりに作られて、ヒーターが仕込まれている。70℃まで温度をあげて、黴菌を殺してしまうのだ。

 68℃以上あげると、タンパク質は変質するので、100℃の沸騰、煮沸でなくても用が足りる。加えて、温度が下がるまで空気の中の黴菌も手出しができない。また、熱は均一化するので黴菌は逃げられない。

 カドーによると「手入れは1年に1回」。

 デザインでは「STEM 700i」に負けているが、動作させるとLEDが光り、中々に面白い。カドーの新スタンダードモデルだ。

 同様にシロカなどのメーカーも熱で黴菌に対抗している。


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