2025年12月5日(金)

コメと日本人

2025年9月30日

 冷蔵庫、洗濯機、テレビの「三種の神器」がもてはやされていた頃、食卓にも大きな革命が起きた。

(IMAGEMART)

 それが自動式電気釜だ。1955(昭和30)年に東京芝浦電気(現・東芝ライフスタイル)が自動式電気釜「ER−4」を発売した。ここで自動というのは、炊き終わったら自動で停止することを言う。東芝はその後、タイマーを追加する。朝の忙しい家事をサポートするためで、仕掛けておけば人がいなくてもご飯が炊けるのは、画期的だった。

1955年に東芝が発売した自動式電気釜「ER-4」(TOSHIBA)

 家事を楽にしてくれる炊飯器は、ここから始まった。

 それまでも、電気で炊飯できるものはあったが、自動で電源オフにならないため、焦げないように、ずっと付いている必要があり、薪を焚べるなどの肉体労働は軽減したものの、その時間で別の家事ができるというわけではなかった。

 これが日本初の自動で電源がオフになる炊飯器。水がなくなった時点(日本炊飯は炊き干し法と呼ばれる方式を採用。98℃、20分連続沸騰させ、水がなくなるまで炊く)で、電源が切れる機械的な仕掛けをほどこした。炊飯の間、別の家事にかかりっきりになることができるようになった。

 その後、保温のためだけの電子ジャーを、象印マホービンが開発(70年)。三菱電機が、炊飯器にジャー機能を追加した(72年)。これにより長時間保温が可能になった。カタログに「ジャー炊飯器」と記載されるのは、それまでの保温炊飯器はジャー以外の方法を取っていたからだ。

 進化はしたが、この時点でも、「はじめちょろちょろ中ぱっぱ」という炊飯の原理通りに炊飯していない。火力「制御」ができなかったのだ。

 制御ができるようになったのは、79年に、松下電器(現・パナソニック)が「マイコン」でプログラムを追加してからである。それまでは一定の火力で炊くだけだった。

 今でもプログラム制御しているという意味で、「マイコン」と表示されることが多い。

 そして、88年に松下がヒーターのIH化(IH=電磁誘導加熱)を行った。ヒーターは電気を熱に変え、その熱を内釜に伝えることにより加熱するが、IHの場合は、電磁誘導により内釜自体を発熱させるので効率が桁違いによい。これが普及したのが93年のことだ。


新着記事

»もっと見る