高級炊飯器の未来
どこに向かうのか?
東芝ライフスタイル社は現在、中国の美的グループの傘下にあり、東芝ブランドの家電を一任されている。当然、儲けを出すことが前提である。そのためには、できる限り、美的製品と共通パーツで組み立てるのが一番である。全世界での白物家電のシェアが第2位という美的は、日本メーカーの約10倍の生産量を誇る。パーツコストで比較した場合、日本メーカーは同じ土俵にすら上がることができないのは事実だ。
しかし、高級炊飯器に限っては、日本製なのだ。理由は3つある。1つ目は、炊飯器は日本独自の進化を遂げていること。2つ目は、ジャポニカ米(短粒種)であること。世界的には、インディカ米(長粒種)が80%でジャポニカ米は20%と少ないが、日本で食べられるのは短粒種だ。ジャポニカ米は、ご飯単独でもおいしいという特徴を持つ。
特にコシヒカリの誕生以降、洋食の濃い味にも負けない強めの味に品種改良されている。現在、食用で約200品種。もちろん高級炊飯器もそれを意識して作られており、東芝の炊飯器は70品種に対し独自の炊飯プログラムで対応している。
3つ目は日本製に対する品質信頼だ。「メイド・イン・ジャパン」は、世界の工場となった台湾、中国、韓国でも、一目置かれている。日本人の、日本人による、日本人のための高級炊飯器は、やはり日本製でありたい。
06年の本炭釜から始まり、来年20周年を迎える高級炊飯器。「炊飯」という意味では、細部の詰めが残っているものの、今までのように大きなステップアップはないかもしれない。そんな時、高級炊飯器は、どう進化するのだろうか?
1つ見えている道筋は、万能鍋だ。電気圧力鍋は調理家電として定着したが、今の高級炊飯器は同等以上と言っても良い。最強の調理家電の1つだ。ただ、ご飯とおかず、同時に作ることができないので、冷凍などをうまく使わなければいけない。これほどの技術を炊飯器だけに使うのは、実にもったいない。今後の課題でもある。
