2025年12月6日(土)

コメと日本人

2025年9月30日

高級炊飯器の未来
どこに向かうのか?

 東芝ライフスタイル社は現在、中国の美的グループの傘下にあり、東芝ブランドの家電を一任されている。当然、儲けを出すことが前提である。そのためには、できる限り、美的製品と共通パーツで組み立てるのが一番である。全世界での白物家電のシェアが第2位という美的は、日本メーカーの約10倍の生産量を誇る。パーツコストで比較した場合、日本メーカーは同じ土俵にすら上がることができないのは事実だ。

 しかし、高級炊飯器に限っては、日本製なのだ。理由は3つある。1つ目は、炊飯器は日本独自の進化を遂げていること。2つ目は、ジャポニカ米(短粒種)であること。世界的には、インディカ米(長粒種)が80%でジャポニカ米は20%と少ないが、日本で食べられるのは短粒種だ。ジャポニカ米は、ご飯単独でもおいしいという特徴を持つ。

 特にコシヒカリの誕生以降、洋食の濃い味にも負けない強めの味に品種改良されている。現在、食用で約200品種。もちろん高級炊飯器もそれを意識して作られており、東芝の炊飯器は70品種に対し独自の炊飯プログラムで対応している。

 3つ目は日本製に対する品質信頼だ。「メイド・イン・ジャパン」は、世界の工場となった台湾、中国、韓国でも、一目置かれている。日本人の、日本人による、日本人のための高級炊飯器は、やはり日本製でありたい。

東芝 真空圧力IH「RC-10ZWX」(2025年)(TOSHIBA)

 06年の本炭釜から始まり、来年20周年を迎える高級炊飯器。「炊飯」という意味では、細部の詰めが残っているものの、今までのように大きなステップアップはないかもしれない。そんな時、高級炊飯器は、どう進化するのだろうか?

 1つ見えている道筋は、万能鍋だ。電気圧力鍋は調理家電として定着したが、今の高級炊飯器は同等以上と言っても良い。最強の調理家電の1つだ。ただ、ご飯とおかず、同時に作ることができないので、冷凍などをうまく使わなければいけない。これほどの技術を炊飯器だけに使うのは、実にもったいない。今後の課題でもある。

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Wedge 2025年10月号より
コメと日本人
コメと日本人

「令和の米騒動」─。米価高騰、コメ不足の原因は複数あるが、ここまで騒ぎが大きくなった背景には、稲作に対する、長年の国民の無関心もあるのではないか。稲作の未来を経済的に考えれば、スマート化、大規模化一択なのだろう。しかし、それによって地域の担い手や環境保全は誰が行ってゆくのかの議論は乏しい。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」で、米価が下がれば関心をなくすのではなく、日本の稲作の未来をどうするのか、時間をかけて考え、耕していく必要がある。


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