高齢者の増加に伴い、単身世帯が増えている。令和の世、当然と言えば、当然だ。が、独り身は寂しいと見えて、ペットを飼い始める人も多いと聞く。
ペットは何かと手がかかるが、その中の一つに、今使っている家電で上手く対応できないという話もある。例えば、犬の毛が生え変わる時期。部屋には毛が大量に散乱する。掃除機で掃除をするのだが、ヘッドブラシに毛が絡まると逐一手で除去しないといけない。しかも、ペットというものは、こちらが忙しい時に限ってまとわりついてくる。「お前のために苦労しているんだ。わかったなら、さっさとあっちに行って静かにしておいで!」と言っても、けろりとして隣に座ったりしてくる。
ペットに文句言っても始まらないとなると、掃除機に頑張ってもらうしかない。しかし、掃除機は「ペット用」として売られていない。というのは、家電は「人の生活」をサポートするためにあるからだ。このため、ユーザーがペットによる問題にあったものを選ぶ必要がある。
これは何も掃除機に限ったことではない。体臭、糞尿臭を問題とする人もいるだろうし、自分が外出している間、何をしているのか、見たいという人もいるだろう。
今回、ペット要望の高い、ペット用ににふさわしい、掃除機、空気清浄機、見守り機器をセレクトしてみた。
大量の抜け毛、どうしてくれようか? 〜掃除機編〜
掃除で面倒なのは、抜け毛だ。特に長毛種になるとかなり厄介。長いのでヘッドローラーに絡む可能性があるからだ。毛は掃除機の天敵と言っても良いゴミで、絡むと最悪の場合、カッター、ハサミなどで毛を切り、手で除去してやる必要がある。
ペットによる一番の差はその量。人間は毛のない猿。もふもふではない。散髪でもしない限り、大量の毛に悩まされることはない。
最近はスティック型掃除機が全盛だが、大量のゴミを処理するなら、キャニスター型に限る。吸引力が全然違うからだ。スティック型掃除機の電源はバッテリー。使える電気量に限りがあり、クルマで言うと省エネのケチケチ運転となる。それがキャニスター型だと電源ケーブルで電気がどんどん送られてくる。当然全力走行もできる。
私は、久しぶりにキャニスター型を使ってみた時、あまりの吸引力に感動を覚えた。またキャニスター型でも紙パック式がお勧めだ。
サイクロン式って紙パック式の欠点を克服してできたのではと思う人もいるかもしれない。だが、それは1980年代中頃から2000年前のサイクロン導入時期。実は、それ以降は状況が変わっている。
何が変わったのかというと環境基準。1997年に、PM2.5など、目に見えない空中浮遊物の健康影響が指摘され始めた。それほど小さく、軽いと、そう簡単に遠心分離することはできない。分離槽、サイクロン式ではダストボックスにかなりの高さが必要となる。このためサイクロン式も排気フィルターを持つことになった。排気による室内の2次汚染を防ぐためだ。
その間、紙パック式は不織布3層構造にし、使用面積を増やした。結果、なかなか目詰まらなくなった。この構成は対コロナウイルス用マスクと同じ。当然マスクの進化は、紙パックの進化でもある。紙パックは0・3マイクロメートルの物質までトラップできるHEPAフィルター同様の機能を持つに至った。このサイズだと、花粉、ハウスダスト、PM2.5はもちろんのこと、コロナウイルスすらフィルタリングできる。紙パックは300円/枚くらいするが、引き換えに、排気で室内を汚す恐れのない掃除機となった。
またサイクロン式は、排気以外にもう一つ問題を抱えている。ゴミ廃棄時にも吸塵した微細なゴミを大気中にばら撒く可能性だ。現在、スティック型掃除機の多くはサイクロン式に準じているが、高価格製品は、ダストタワーに設置された紙パックの中にゴミを集める方式が取られつつある。紙パックに全部移し替えてしまえば、面倒なゴミ捨てをしなくて済むとということだが、同時に廃棄時の問題もなくなるというわけだ。紙パックは古臭い技術ではなく、最新の知見が詰め込まれた、新しい技術になっている。
そんな中、推しは、パナソニックの「Jコンセプト MC-JP870K」。令和をリードできる掃除機として開発されたモデルで、ペット用としても優れている。
その1つが「からまないブラシ」だ。毛絡みは掃除機の天敵。絡むとヘッドローラーが回らなくなる。が、手を使ったメンテナンスを採用できなかった掃除機もある。「ロボット掃除機」だ。「毛絡みして、ヘッドローラーが止まりました。本日掃除できませんでした。」という言い訳ができない分野だ。
これに対する技術を開発したのはルンバで有名なiRobot社。ゴミを2本のローラーで掻き取るのだが、ローラーに斜めの溝を付けることにより、外側から内側へと毛を移動させる。
「からまないブラシ」は、それに似る。掃除機のヘッドローラーは基本、長い1本ローラー。が、からまないブラシはそれを2分割。しかも念が入ったことに斜めにとりつけられている。髪の毛、糸などの細長いものは、ローラーに巻きつくが、どんどん、真ん中に移動する。髪の毛などのローラーにまとわりつくゴミは、ここでローラーから外れ、ヘッド中央の吸引口に吸い込まれる。
ちなみに、斜めに付けられたローラーは工具がない限り外すことはできない。絶対に絡んだりしないというパナソニックの自信作でもある。
意地悪テストを含め、何度もテストしたが、絡みなく、何事もなかったように吸引し続ける。今回、大量の犬の抜け毛のテストでも、同じだった。
確かにバッテリー駆動でないので、使い勝手は旧態然としている。が、して欲しいことを確実にこなす上、パワーがある。花粉、ハウスダスト、PM2.5など人体に影響を及ぼす物質が室内に出てくる問題はない。部屋を清潔にするという目的では、最上のモデルといえる。付け加えていうとダストセンサーを持ち、アレルゲンであるハウスダストが残っているか、否かもわかる。家の中、最強と言ってもいいだろう。
犬を飼っている人は、結構犬をクルマに乗せる。クルマのファブリックは人間の衣類に対して作られている。このため、犬の抜け毛がごそっと付く。クルマの室内は狭い上に、背もたれなど、いろいろな傾斜が存在する。家の中と条件があまりにも異なり、パナソニックの「JMC-JP870K」が最強ということにはならない。
車内には、AQUAのコードレスハンディ掃除機「AQC-SD1R、PetPrimo」がお勧めだ。理由は付属のアタッチメントのうちに、「ケトリノズル」と言う、ファブリックなどに付いた毛をこそぎ落としながら吸い込めるアタッチメントがあるからだ。