米首都ワシントンの有名文化施設の表記が「ドナルド・J・トランプ・アンド・ジョン・F・ケネディ舞台芸術センター」に変更された
米首都ワシントンの総合文化施設「ジョン・F・ケネディ舞台芸術センター」の名称に、ドナルド・トランプ大統領の名前が加えられた。これを受け、野党・民主党のジョイス・ベイティ 下院議員は24日、トランプ氏の名前の削除を求めて連邦地裁に提訴した。
ケネディ・センターの理事会は先週、施設の名称を「ドナルド・J・トランプ・アンド・ジョン・F・ケネディ舞台芸術センター」に変更することを決定した。
トランプ氏は2期目の大統領就任後に、同施設の理事会メンバーを多数解任し、その後任に自身の側近たちを置いた。理事会はその後、トランプ氏を理事長に選出。ケネディ・センターの会長には、トランプ氏に近いリチャード・グレネル氏が就任した。
同施設のウェブサイトによると、現在の理事会は、トランプ氏が任命した34人と、米国法に基づいた23人で構成されている。
今回提訴したベイティ氏は、米国法によりケネディ・センターの理事に任命された複数の民主党議員の一人。同氏は訴状で、同施設の名称を変更するには「議会制定法」が必要で、今回の変更は違法だと主張している。
また、ベイティ氏は名称変更に関する会議に電話で参加したものの、反対意見を述べようとした際に音を消されたとしている。
ケネディ・センターについてベイティ氏は、連邦議会がケネディ元大統領の「生ける記念碑」とする方針だったとも主張している。
訴状は、「アメリカの共和制というより、権威主義体制を思い起こさせるような光景の中で、現職大統領と、彼が厳選した自分に忠実な者たちが、この歴史あるセンターの名をトランプ大統領の名にちなんで変えた」と訴えている。
BBCに提供された声明の中で、ホワイトハウスは、トランプ氏が「力を入れ」、「財政を強化し、建物を近代化し、分断的なウォーク（woke）プログラムを終わらせる」ことで、ケネディ・センターを救ったと主張した。ウォークとは、差別や格差の問題を意識する傾向を指す言葉。
「その結果、ケネディ・センターの理事会は、名称をトランプ・ケネディ・センターに変更することを全会一致で決めた。これは、アメリカの最も象徴的な文化施設の一つにとっての、成功と威信、そして威厳の回復という新時代を告げる歴史的な動きだ」と、ホワイトハウスのリズ・ヒューストン副報道官は述べた。
理事会の決定を受け、19日にはケネディ・センターの外壁にトランプ氏の名前が追加され、公式ウェブサイトのロゴも「ザ・トランプ・ケネディ・センター」という表記になった。
この名称変更に、とりわけワシントンで激しい批判が噴出している。同施設は建設当初からケネディ元大統領の名前を冠した、象徴的なランドマークとなっていた。
建設が始まったのは1950年代だった。1963年のケネディ氏暗殺を受け、同氏の名前を名称に入れることが議会で決まった。
トランプ氏は2期目就任後、自身の側近たちをケネディ・センターの理事に任命した。さらに、施設が「ひどい状態」だとして、大規模改修などの資金約2億5700万ドル（約400億円）を議会の承認を得て確保した。
ケネディ家の複数のメンバーは、ソーシャルメディアへの投稿で、名称変更を批判している。
ジョー・ケネディ3世元下院議員は、「ケネディ・センターは亡き大統領の生ける記念碑であり、連邦法によってケネディ大統領の名前が付けられている」と述べた。ケネディ元大統領は、ジョー氏の大伯父にあたる。
「誰が何と言おうと、リンカーン記念堂の名称を変えられないのと同じように、ケネディ・センターの名称も変更することはできない」と、同氏は付け加えた。
（英語記事 Democratic lawmaker sues to remove Trump's name from Kennedy Center）
