2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年7月11日

 米国は、穏健を装うイスラム復興主義者に惑わされ、イスラム社会に存在する非イスラム教民主政党と彼らの支持者を支援すべきであることを見逃してしまった。彼らは、寛容と節度、法の支配、女性の権利の尊重と憲法に定められた自由に基づく社会を築くことを望んでいた。米政府は、新しい現実を受け入れ、エジプトのシシ政権との関係を築くべきである。また、2014年の後半に行なわれる国政選挙を待つことなく、チュニジアの非イスラム教政党との関係も築いていく必要がある。「穏健」であっても、過激なジハーディストであっても、イスラム主義者を排除しなければならない。そのために、米国は、イスラム社会の非イスラム教民主主義者を支援するべきであり、それが米国の国益である、と論じています。

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 筆者は、ソルボンヌ大学、ニューヨーク大学で学び、国連に勤務した経験のある、アメリカ在住のチュニジア人評論家、著述家で、中東における、原理主義的民主主義擁護論に対する基本的な反論を展開し、エジプトのシシ政権を支持しています。それは、アラブ諸国の中でも、リベラル思想が強いチュニジア出身であることと、米国、国連との長年の付き合いから来る、開かれた考え方から来るものなのでしょう。

 論説が引用している、2009年のオバマのカイロ演説は、「選挙を行なうだけでは真の民主主義を達成することはできない」と言っていますが、これは、2010年のアラブの春以来、欧米の評論が中東における民主主義発展の夢に浮かされるようになる前の演説であり、民主化されたイラク政治の混乱に手を焼いていた時期の演説です。当時は、就任早々で、プラハでは核廃絶を訴えたりして理想主義を振りかざしたオバマでさえも、単なる選挙による多数支配に、その後ほどの幻想を持っていなかったことを示しています。

 トリーリは、寛容と節度、法の支配、女性の権利の尊重と憲法に定められた自由に基づく社会を築くことを望む、非イスラム教民主政党と彼らの支持者を支援すべきである、と指摘しています。これは、エジプトで言えば、シシ政権を支持している一般知識階級を支持すべきことを意味します。

 筆者自身がアラブ社会にどれだけの影響力を持つかは分かりませんが、現実的にシシ政権支持がアメリカの国益に沿っている実態を考えれば、アメリカの政策にとっては良いアドバイスであり、シシ政権の独裁性を批判する論調がまたぞろ目立って来ている中で、援護射撃になると思います。

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