2025年12月29日(月)

BBC News

2025年12月29日

ブリジッド・バルドーさんは1950年代のフランス映画界の常識を打ち破った

1950年代のフランス映画に革命をもたらし、性的解放の象徴となったフランス人俳優ブリジット・バルドーさんが死去した。91歳だった。

フランスでは名前の頭文字を取って「BB」と呼ばれた。「素直な悪女」など50本近くの映画に出演し、1973年に引退。その後、動物福祉の向上に尽くした。

バルドーさんが設立した「ブリジット・バルドー財団」は、「計り知れない悲しみ」をもって彼女の死を発表するとする声明を発表。「世界的に有名な女優および歌手だった。輝かしいキャリアを捨て、動物福祉と自らの財団に人生とエネルギーをささげることを選んだ」とした。

声明は、バルドーさんが死去した日時や場所を明らかにしていない。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、「彼女の映画、声、まばゆいばかりの輝き、イニシャル、悲しみ、動物への惜しみない情熱、(フランスの象徴)マリアンヌとなった顔。ブリジット・バルドーは自由な人生を体現していた」と追悼。「フランスの存在、普遍的な輝き。彼女は私たちの心を震わせた。私たちは世紀の伝説を悼む」とした。

同国の極右政治家マリーヌ・ル・ペンさんは、フランスは「才能、勇気、率直さ、美しさの点で類まれだった女性を失った」と述べた。

バルドーさんは1992年、ル・ペンさんの父親で極右政治家ジャン=マリー・ル・ペンさん(故人)の顧問を務めたベルナール・ドルマールさんと結婚した。

バルドーさんは晩年、同性愛嫌悪の中傷発言をして評判を落とした。また、人種的憎悪をあおったとしてたびたび罰金を科された。

アメリカの一部の州で上映禁止

ブリジット・アンヌ=マリー・バルドーさんは1934年、パリの裕福な家庭に生まれた。家族はバルドーさんをバレリーナにしたいと思っていた。

10代で雑誌「エル」の表紙を飾り、フランスでセンセーションを巻き起こした。その後、誘われて映画界へと進んだ。

象徴的な役を演じたが、なかでも「素直な悪女」(1956年)で演じた性的に解放された女性の役で注目された。監督は当時の夫ロジェ・ヴァディムさんだった。

同作はアメリカでは批判され、一部の州では上映禁止となった。一方、フランスの実存主義哲学者シモーヌ・ド・ボーヴォワールさんは、彼女を「絶対的自由」の象徴として称賛した。

1950年代後半から1960年代にかけ、深みのある演技で高い評価を得た「真実」、ジャン=リュック・ゴダール監督の傑作「軽蔑」、ジャンヌ・モローさんとともにコメディの才能を発揮した「ビバ!マリア」などに出演。世界的な人気俳優となった。

映画界での活躍だけでなく、ファッション・アイコンとしても記憶される存在となった。無造作な金髪と大胆なアイラインは、世界中で美の流行を作った。

4度結婚し、フランス俳優で映画プロデューサーのジャック・シャリエさん(今年9月死去)との間に一人息子ニコラさんをもうけた。

ニコラさんはのち、母親バルドーさんの自伝で「小さな犬を産む」ほうがよかったと書かれたことで精神的に被害を受けたとして、バルドーさんを訴えた。

バルドーさんは本格的な女優を目指したものの、快楽主義的なセックスシンボルとして売り出され、フラストレーションを募らせた。

名声の絶頂期にあった39歳で引退を発表。動物福祉に人生をささげるとした。「私は若さと美しさを男性に与えた。知恵と経験を動物に与える」との発言は、広く知られるようになった。

1986年に、野生および飼育動物の保護に取り組む「ブリジット・バルドー財団」を設立した。

バルドーさんは後年、イスラム教や同性愛者、MeToo運動に関する発言で物議を醸した。

1990年代後半以降、オンラインやインタビューでイスラム教徒についてたびたび発言し、それが人種的憎悪をあおったとして何度か罰金を科された。2008年には自身のウェブサイトで、イスラム教徒が「自分たちのやり方を押し付けて私たちの国を破壊している」と訴え、1万5000ユーロ(現在のレートで約275万円)の罰金を科された。

2003年に出版した著書「沈黙の叫び」では、同性愛者、現代アート、政治家、移民がフランス文化を壊していると主張し、激しい批判にさらされた。

2018年には仏誌パリ・マッチのインタビューで、MeToo運動の中でセクハラについてコメントした女優らを「偽善的で、ばかばかしくて、おもしろくない」と断じた。そして、「役を得るためにプロデューサーといちゃつく女優はたくさんいる」と述べた。

(英語記事 French cinema actress Brigitte Bardot dies aged 91

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c5y2yw01ydwo


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