日本で最も多くの重要文化財建造物を有する都市、京都。奥谷組は1873(明治6)年の創業以来、修復や改築、新築に至るまで社寺建築一筋に歩み、京都をはじめ全国の社寺を支え続けてきた。
これまでに奥谷組が行った施工は、実に1700件以上。平安神宮や神田明神、東寺や伏見稲荷大社など、名だたる社寺が多く、その実績には目を見張る。
そんな奥谷組を率いているのが、6代目の社長である千田真由美さん(43歳)だ。
1982年、京都市生まれ。同志社大学経済学部および日本大学理工学部建築学科卒業。2008年、鴻池組入社。10年、奥谷組に入社。一級建築士を取得後、19年、同社6代目の代表取締役に就任。現在、京都府建築士会の代議員も務めている。(写真:生津勝隆 以下同)
「私はまだ6代目、150年ほどの歴史なので老舗としては若い方です。京都には、平安時代から続いている仏具屋さんや、十数代続く瓦屋さんなど当たり前にいらっしゃいます」
そう語る千田さんは、同志社大学経済学部を卒業後、日本大学理工学部建築学科へ進学した。就職先の大手ゼネコンで、現場監督などを経験後、家業である奥谷組に就職。しかし、しばらくすると先代が突然倒れ、2019年、急遽社長に就任した。
「それまで、家業を継いでほしいと言われたことは一度もありませんでした。でも、今思い返すと子どもの頃、祖父や父が土日に会社関連の式典に連れていってくれたり、変わったコンパスをくれたりしましたね。それでも、家業に興味を持たずに経済学部に進学したわけですが、いざ就職するとなった時に改めて、うちの仕事を調べると、格好良い仕事だなと思ったんです」
奥谷組では、2代目の熊之輔の時代に新築した奈良の長谷寺大講堂大玄関が重要文化財に指定された。
「数百年ほどたてば、私たちの時代に手掛けた建物も、重要文化財や国宝に指定されるかもしれない。そう考えると、とても面白いことだと思います」
今はあらゆる業種で効率化のために分業が進む時代だが、その流れは建築業界にも及んでいる。かつては、親方がいて職人を連れてという業態が当たり前だったが、戦後は一般の建設会社は職人を持たないのが普通になり、仕事が入ると下請けとして職人を雇う形になった。奥谷組は建設会社として仕事を受注する一方で、常に50人ほどの職人を抱えながら直営で木工事を行う。昔ながらの体制を貫いているのだ。
