ロシアの独立系メディア、モスクワ・タイムズによると、クレムリンは戦争目的と、「特別軍事作戦」に関する説明の仕方を見直し、その重要度を下げつつある。クレムリンは、ウクライナ全土、特にキーウの占領という従来の目標から、ロシアが既に支配している東部および南部ウクライナの占領地を掌握するという目標へと、世論へのメッセージを転換しようとしている。
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プーチンの「成功体験」
本件記事にあるように、ウクライナは25年の春までに、領土奪還に集中する消耗戦から、ロシア領内への戦略的打撃によりロシアの経戦能力を削ぐことを重視する方針に転換した。これが今春から目に見えて効果を発揮し始めている。一方、ロシアは戦場で成果が出せないことに加え、グローバルな戦略環境の悪化、経済の不振が続いている。
問題は、このような状況の中で、プーチンがこれまでの強硬路線を変更し和平に向けてより柔軟な方針を打ち出してくるのか、それとも従来どおり、あるいは一層の強硬姿勢で臨むのか、ということだ。本件記事は前者のニュアンスで書かれているが、なお後者の可能性の方が高いように思われる。その理由は二つある。
一つは、5月9日の戦勝記念日に停戦を呼び掛けたこと、また「戦争目的と、『特別軍事作戦』に関する説明の仕方」の「見直し」など、最近のロシア側の言動を「ロシアの後退」を示すものと解するには無理があることだ。
戦勝記念日における「停戦」の呼びかけは昨年も行っており(但し守られていない)、停戦期間が終わればそれまで同様、あるいはそれ以上の攻撃が続いた。
また、プーチンは本年の戦勝記念式典終了後のロシア・メディアとの対話で、「戦争は終結に向かっている」と述べたと報じられているが、実際の発言は「事態が収束に向かう」と抽象的に言っただけで、問題はどのように「収束」するかであるにも拘わらず、その点についてこれまでの主張を変更したと解すべき材料は見当たらない。
さらに、ロシア側がドンバス制圧を重視しているのも戦争当初から一貫した対応であるが、それはウクライナ支配の一段階に止まる。現に5月初めには、ウシャコフ外交担当大統領補佐官が改めて、これが「交渉の前提条件」であると確認している。
要するに、最近のプーチン政権の発言を仔細に見れば、多少の修辞上の違いはあっても、これまでの主張の延長にあるとする以外の解釈は難しいのである。
一層の強硬姿勢に出る可能性を考えるもうひとつの、かつ、より本質的な理由は、プーチンの実体験からくる信条だ。プーチンはこれまでいくつもの危機的状況に直面してきたが、その都度、引き下がるのではなく、逆に一層の強硬姿勢で臨むことで乗り切ってきたという「成功体験」をもっている。
