根強いガソリン車信仰
長年ロシアを観察してきて、痛感するのは、かの国においてはガソリン車への支持が圧倒的なことである。「信仰」に近いと言ってもいい。ディーゼル車ですら微妙な扱いであり、ましてやEVへの不信感は大きかった。
よく言われるのは、ロシアは寒冷地だから、どうしてもガソリン車の方が安心感があるという点である。ロシアのドライバーにとってみればガソリン車は、冬でも何とかなる、どこでも給油できる、遠出しても不安が少ない、修理できる人がいる、中古市場で売れる、という具合に、安心材料が揃っている。
鶏が先か卵が先かという話になってしまうが、EVへの需要が低いから、充電インフラの整備が進まない。充電できる場所がないから、EV普及が進まない。そんな状態が、長年続いてきた。
ただ、「我が国は寒いから、EVには不向き」というロシア人の発想は、根拠のない思い込みかもしれない。グラフに見るように、EV普及率で上位に来るのは、ロシアに劣らず寒い北欧諸国である。
ノルウェーに至っては、25年に新規販売された乗用車の実に97%がEVだった。確かに、寒冷地ではEVの航続距離低下、長い充電時間、暖房負荷などの不利はあるが、北欧の経験はそれがEV化の決定的な障害ではないことを示している。
ノルウェーは長年にわたり税制や通行料・フェリー・駐車などの優遇を組み合わせ、EVシフトを図ってきたという。また、同国では水力中心の安価で低炭素な電力、住宅での充電、地方部を含む充電網がEV普及を支えてきた。
そう考えると、ロシアでEV化が進まない原因は、寒冷気候そのものより、政策インセンティブ、充電インフラ、購買力、産業基盤、エネルギー価格構造、そして国民のマインドなどが重なった複合的な要因によるものと言えそうである。
販売も右肩上がりとは行かず
ロシアの有力な実業メディアのRBCによれば、ロシアにおけるEVの販売台数は図2のように推移しているということである。19年には「1日1台ペース」だったものが、その後は多少伸び、24年には1万7805台と過去最高を記録した。しかし、25年には前年比29.8%も落ち込んでいて、右肩上がりとはいかない。
実は、25年にロシアで不振だったのはEVだけでなく、乗用車販売台数が15.6%も低下した。高金利の上に、リサイクル税の引き上げなどが影響した。それでも、EVの落ち込みがひときわ大きかったことは間違いない。

