チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年8月5日

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富坂 聰 (とみさか・さとし)

ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

 もっとも映像があまりにうまく撮れ過ぎていることや従業員のコメントがメディアの意図を汲んだように絶妙である点など気にならないわけではなかった。だが、これまで無数にあるメディアの告発をきっかけに広がった食品汚染問題のパターンからすれば、これも決して珍しいことではない。

 例えば昨年、CCTVの潜入取材により河南省の養鶏場が違法な成長促進剤を使っていた問題が明らかになったケースでも、養鶏場のオーナーは、わざわざ記者に違法薬物の効果の素晴らしさを嬉々として説明している映像が繰り返し報じられていた。

 これは一つには感覚の違いに由来する問題かもしれない。つまりコメントしている従業員の側にも、それほど悪いことをしているという意識はないということだ。上海福喜の問題が報じられて以降も中国のマクドナルドもケンタッキーフライドチキンも相変わらずの行列ができていたというから、この感覚はある程度消費者の側にも共有されているものなのかもしれないのだ。

 メディアが過敏に反応する食品問題では今回の上海福喜のケースでも見られたようにたいてい当局の対応も迅速だ。それなのに一向に問題が無くならないのは、こうした感覚の共有が一つの理由として考えられるのではないだろうか。

 2007年に起きた毒ギョーザ事件――これは労使問題であり食品問題とは言えないのだが――では、劇薬であるメタミドホスが混入した可能性があるとして大量のギョーザが廃棄されたはずなのだが、実際にはその大部分が再び市場に出回ったのである。つまり現在、今回問題になったナゲットを二束三文で売ってくれと申し出ている業者が後を絶たないという状況であっても不思議ではないというのが中国の実態なのである。

残留農薬にメラミン……
後を絶たない食品問題

 ナゲットの問題が「外資たたき」だとする考え方は、反日デモの参加者が日本の名前がついているからと日系スーパーを襲撃する発想と同じで、そこに大きな誤解がある。実際、日系スーパーで扱う商品の99%は中国の物で問題は従業員のそのレベルだ。これは食品工場も同じで困るのはむしろ地元の人々だ。ましてや上海市から表彰されている企業ともなれば地元政府との癒着さえ指摘される利害共有者と見るべきだろう。

 ただ、一連の報道で最も気になったのが、やはり食品問題に対する頻度の問題だ。つまり、上海福喜の問題は日本にとっては久しぶりの中国発の食品問題であったのだが、中国の人々にすればほぼ1週間に一度くらいのペースで接する一つのニュースでしかないということだ。

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