2022年7月2日(土)

安保激変

2014年8月11日

»著者プロフィール
著者
閉じる

小谷哲男 (こたに・てつお)

明海大学外国語学部教授

日本国際問題研究所主任研究員を兼任。専門は日本の外交・安全保障、日米同盟、インド太平洋の国際関係。主な共著に『アジアの国際関係―移行期の地域秩序』(春風社)など。
 

本来あるべき憲法解釈に落ち着いた

 問題は、国連憲章の中で集団的自衛権という概念が明確に定義されていないことにある。日本政府はこれを「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」と定義し、この中の「自国が直接攻撃されていないにもかかわらず」という点が強調されたため、集団的自衛権が他国の防衛を目的とするかのような誤解を生むことになった。

 しかし、世界の国際法学者の間では、集団的自衛権を「他国への攻撃が自国の安全にも等しく危険である場合に共同で自衛を行う権利」とするのが一般的である。言い換えれば、攻撃を受けた国と共同防衛を行うことは、あくまで自衛措置の結果ということになる。この定義を取るならば、日本国憲法が集団的自衛権の行使を禁止しているという解釈は説得力を持たなかったはずである。

 この点、今回の閣議決定は集団的自衛権を発動する条件として、(1)日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由と幸福の追求権が根底から覆される明白な危険がある、(2)日本の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない、(3)必要最小限の実力行使にとどまることを挙げている。つまり、憲法が自衛権を禁じていない以上、条件が整えば集団的自衛権も行使できる、と本来あるべき憲法解釈に落ち着いたと評価できる。

 集団的自衛権が行使できるようになったからといって、憲法の平和主義が崩れたわけでも、ましてや戦前の軍国主義に戻るわけでもない。そもそも、閣議決定が打ち出した3条件は大変厳しいものである。集団的自衛権に関する国民の慎重な姿勢は、この3条件に十分反映されているともいえよう。

 実際の行使には、国会で防衛関連法制を見直す必要があるし、国会の承認を含む文民統制の下で行われることになる。また、国際司法裁判所の判例により、集団的自衛権を行使するには攻撃を受けた国が武力攻撃の発生を証明し、その上で援助を要請してこなければならないという前提もつく。集団的自衛権を行使した場合は、国連安全保障理事会への報告の義務もあり、国際的な説明責任も求められる。

関連記事

新着記事

»もっと見る