2022年7月2日(土)

安保激変

2014年8月11日

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小谷哲男 (こたに・てつお)

明海大学外国語学部教授

日本国際問題研究所主任研究員を兼任。専門は日本の外交・安全保障、日米同盟、インド太平洋の国際関係。主な共著に『アジアの国際関係―移行期の地域秩序』(春風社)など。
 

国連憲章で認められている集団的自衛権行使

 20世紀に入って第一次世界大戦という悲劇を経験した国際社会は、戦争の違法化を始めた。国連憲章では、加盟国による武力の行使は原則として禁止され、国家間の紛争は平和的な手段で解決することが求められるようになった。原則禁止というのは、国連加盟国が国際の平和と秩序を乱す行動を取った場合は、安全保障理事会を中心に加盟国全体で国連軍を組織してその国に制裁を加えることが想定されたからである。これが集団安全保障である。

 しかし、実際に侵略が行われた場合に、国連軍が組織され、侵略国に制裁を加えるまでには時間がかかる。場合によっては、国連軍が組織される前に侵略が完了してしまうこともあるであろう。このため、国連軍が機能するのを待つ間、侵略を受けた国には自衛権が認められることになった。実際には、国連安保理常任5カ国には拒否権があり、冷戦の文脈で国連軍が組織されることもなかったため、国家は自衛権に基づいて自国の安全を守らなければならなかったのである。

 国連憲章第51条は、加盟国に対して武力攻撃がなされた場合に、個別的または集団的自衛権を行使することを認めている。個別的自衛権は国家の正当防衛であり、国連憲章の成立以前から単に「自衛権」として認識されていた。一方、集団的自衛権は独力で他国からの攻撃を排除できない中小国の要請に基づき、共同防衛を行う根拠として国連憲章で規定された。言い換えれば、個別的自衛権は降りかかる火の粉を払うことであり、集団的自衛権は隣の火事を消しに行くことであろうか。

 集団的自衛権に基づき、国連加盟国は米韓同盟や北大西洋条約機構(NATO)、ワルシャワ条約機構など、二国間および多国間の相互援助・共同防衛体制を構築していった。これら共同防衛の目的は、国連の集団安全保障制度が機能するまでの間隙を縫い、侵略を防ぐことにある。

 国連加盟国である日本にも当然集団的自衛権の行使は認められるはずであり、日米同盟も本来なら集団的自衛権がその法的根拠でなければならない。しかし、日本では1972年に集団的自衛権に関する「保有すれども行使できず」という解釈が定着してしまい、日米同盟の強化に大きな制約を課すことになった。

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