安保激変

2014年8月11日

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小谷哲男 (こたに・てつお)

明海大学外国語学部教授

日本国際問題研究所主任研究員を兼任。専門は日本の外交・安全保障、日米同盟、インド太平洋の国際関係。主な共著に『アジアの国際関係―移行期の地域秩序』(春風社)など。
 

平和憲法があるから
日本の安全が守られてきたわけではない

 加えて、今回の閣議決定の意義は集団的自衛権を行使するという点にあるわけではない。集団的自衛権の行使は国権の発動、つまり国家の自衛権の問題である。しかし、事例に挙げられているような、たとえば日米共同作戦中の米艦船の防護などは、部隊防護(unit self-defense)という軍が持つ自衛権の問題であり、本来集団的自衛権とは切り離して検討されるべき問題である。

 慣習国際法上、部隊防護は各国の軍が持つ権利であるだけでなく、義務であるとされ、各国軍の交戦規則に盛り込まれている。日本では集団的自衛権が行使できないため共同作戦を行う他国部隊の防護もできないとされ、これが特に日米同盟の強化に支障となってきた。年末にかけて日米防衛協力の指針が見直されるが、自衛隊が日米協同作戦時に部隊防護を行えるようになることこそが、今回の閣議決定の最も重要な意義である。

 そして、先に触れた読売の世論調査が示す通り、日本国民は部隊防護を行うことに反対しているわけではない。なぜなら、共同作戦中に助け合うことは良識の問題であり、日本国民が良識を失っているわけではないからである。残念なのは、集団的自衛権の意味と閣議決定の意味が誤解され、国民の間に日本が戦争に巻き込まれる不安が広まってしまったことである。

 平和憲法があるから日本の安全が守られてきたわけではない。戦後の日本人は、安全保障に関する真剣な議論を通じて、平和憲法の理念を維持しながらも現実的な政策を積み重ねてきた。それによって日本は侵略に屈しない意志を示し、平和を維持してきたのである。国会での安保法制の見直しは来年の通常国会で行われる見通しだが、国民の間で問題の正しい理解に基づいた議論が高まることを期待したい。

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