2024年12月22日(日)

中国メディアは何を報じているか

2014年8月12日

「鳳凰週刊」誌ウェブ版本記事(6月16日付記事)

 今年4月中旬に、党中央政法委員会と軍総政治部は共同で意見書を通達し、全国各省・市・県という三つのレベルの党委員会で軍に関わる権利保障についての事務機構を設立させて軍人家族の合法的な権益を守るよう求めた。県以上の自治体での軍に関わる権益を守る機関を設立させたが、これは給料引上げに止まらない、軍人に広く配慮する措置だ。こうした文書がたびたび出されるのは社会が大きく変わる中で軍人軍属の合法的利益が損なわれることが増えていることを示唆する。

 王さんの父親は対越戦争に参戦した38集団軍に属した古参兵であり、1980年代に退役、復員して郫県の国営企業に職を斡旋された。1998年に50歳でこの会社を退職した後、ミツバチ養育やバス運転手もやったが2006年に高齢で病気持ちの彼は職を見つけられなくなった。そこで農村に戻って養豚を始め、親戚が住む石炭採掘会社の宿舎を仮住まいとした。ところが2011年に県商務局が都市計画実施のため立ち退くよう通知してきた。それまでの慣例では、先にマンションを作ってからそこに移住するはずだが、石炭会社と県商務局が同意せず、配給された家が奪われることになったのである。

 こうして王さんは上層部に訴えの手紙を送り、立ち退きを求める同意書へのサインを拒否し続けた。2014年3月に王さんは成都市の弁護士事務所を訪ねようとしたが、その途中で同僚から「王敏、あんたの家がやられたぞ」と言われたためあわてて家に戻るとそこにあったはずの家が跡形もなくなり、家具など調度品も全て破壊されていた。

 王さんが110番して捜査を求めると警官がやって来たが、ぐるりと一周して帰ってしまった。そこで家が取り壊しにあった翌日、王さんはネットで助けを求めたのである。彼女のツイッターは短期間で大人気となり、多くの賞賛と励ましを得た。それまで県商務局からは何の音沙汰もなかったのに4月中旬になって2通の返信があり、彼女の件が重視され解決することが約束された。

毎年10%のペースで増え続ける係争

 かつて軍所属弁護士だった北京栄徳法律事務所の李軍氏によると、かつて政府の軍関連の権利を守る事は地方「双擁」事務局(軍を擁護し、軍属を優遇し、政治を擁して民を愛するという政治的な政策を「擁軍優属・擁政愛民」と呼び、この略称が「双擁(そうよう)」)の任務の一つで、単なる政治的スローガンに過ぎなかった。しかしその後、制度化が本格化し、山東省では2000年に省傘下の17の市、140の県(日本では町に相当)で軍人の権利を守る作業タスクフォース(領導小組)が設立され、法テラスや法律援助工作ステーション、相談窓口も設けられた。


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