日本としては、前述した「精密工作機械」をはじめとした虎の子の技術のみならず工場運営・管理ノウハウや、品質の再現性を担う頭脳人材の流出を防ぐ経済安全保障上の対策が欠かせない。なぜなら、それはロシアや各国と対峙していく上での日本の競争優位性の源泉であり、地経学上の重要な戦略資産だからだ。
ロシア経済を消耗させる制裁
今年6月、主要ロシア紙の一つであるコメルサントは、アエロフロートが保有する航空機のうち非稼働となっているものは全体の4%に過ぎないと報じた。その一方、ロシアのエアライン主要11社が保有する673機のうち130機(19.3%)が稼働停止に追い込まれているとの分析もある。
アエロフロートを含めロシアのエアラインが保有する主力機材は、米国ボーイング社と欧州エアバス社だ。両社からの部品や技術提供は欧米制裁により完全に停止している。アエロフロートが保有する航空機の非稼働率が低いのは、飛行不能機からエンジン部品、降着装置、油圧機器、電装部品を外し、現役機に移植する「航空機共食い整備(Cannibalization)」や必要部品の第三国を経由した迂回輸入によるものとされるが、こうした対応策が将来にわたり持続可能かは不透明だ。
今年第1四半期、ロシアの国内総生産(GDP)成長率はマイナス0.2%に沈んだ。ウクライナ侵攻から4年6カ月が経過し、戦線での人的損耗も累積している。西側による制裁強化とロシア側の適応との間で続く消耗戦。この持続コストはロシア経済と社会に着実に重くのしかかっている。
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