2026年10月3日(土)

Wedge OPINION

2026年10月3日

 当時、日本では、むしろ米大統領が9日間という長期滞在にもかかわらず、東京を素通りしたことに、失望や不満が広がった。大統領同行のオルブライト国務長官(当時)が〝宥め役〟として、ワシントンへの帰途、急遽立ち寄って「日本軽視ではない」と釈明する騒ぎとなった。

 大統領が直帰したのは、冷淡だったからなどではなく、外交儀礼によるところが大きかった。その前年秋に訪米した江沢民主席の滞在期間がやはり9日間。途中、他国は訪問しない日程だったため、クリントン訪中も外交儀礼上、それに倣ったに過ぎなかった。メディアを含めた日本の官民は、それを理解できなかった。

 ともあれ「米中同盟」の衝撃はこの騒ぎの陰にすっかり隠れてしまった。ジャパン・バッシングならぬ、ジャパン・パッシングという自嘲的な和製英語が生まれたのがこの時だ。

 クリントン大統領が同盟発言というリップサービスをしたのは、96年の台湾海峡危機で高まった米中間の緊張を緩和する意図からだった。海峡危機では、中国が台湾の総統選への妨害を目的にミサイルを撃ち込み、米国が一時、空母を海峡に派遣してけん制する事態に発展した。文字通りの危機だった。 

トランプ氏、「フライングタイガー」にも言及

 今回の米中首脳会談の詳細、トランプ大統領が「同盟」を口にした経緯は、すでに大きく報じられている。復習になるが、大統領は、両国関係の重要さを称える中で「共通の利益の追求によって違いを乗り越え、第2次世界大戦においては、われわれに同盟関係をももたらした」と述べた。大戦中、中国で活躍した米国人義勇兵組織「フライングタイガー」に言及し「勝つために力を合わせたように、両国の未来を築くために力を合わせる」(ホワイトハウスでの歓迎式典)と関係のさらなる発展を誓った。

 習近平主席は、「80年以上も前、中国と米国の人々は肩を並べて日本軍国主義の侵略者と戦った」(歓迎夕食会)と応じ、クリントン訪問時の江沢民主席とは打って変わって日本を名指しで糾弾した。

 中国は大戦の結果を、自ら描く世界秩序の基礎にしたいというのが方針であり、高市早苗首相の台湾海峡発言以来、日本に対し「新型軍国主義」などと非難を繰り返している。それだけに、トランプ大統領の「同盟」発言は、自らの主張を補強する上で好機だったろう。


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