それは、日本の可処分所得と消費支出の長期トレンドを見ても分かる。従来同じ方向の動きとなってきた可処分所得と消費支出は、リーマンショック以降逆方向に動いているのである(図表3)。これは、消費は底堅いのに可処分所得は減少する展開が続いていることを意味しており、これでは早晩消費は息切れしてしまう。
しかも、可処分所得が減少傾向を続ける中で個人消費を過去1年半あまり支えてきたと推計される株高効果も減衰している(図表4)。また、図表4に見られるように、電力料金引き上げなど燃料費増の消費下押しも強まっている。
加えて、「その他要因」も圧縮されている。「その他要因」には雇用改善などを背景にした良好な消費マインドを挙げることができるが、消費税率引き上げや実質可処分所得などもあってその改善も乏しくなっているように見える。これでは消費の伸びは維持できず、現在は所得増が不可欠な局面になっていると言える。
利益還元が不十分な日本企業
企業の収益環境が厳しい状況では、賃金が増えないことは理解できる。しかし、現状では、従業員当たり経常利益額(4四半期移動平均)は大企業・中堅企業で過去最高水準にあり、中小企業でも80年代後半のバブル期ピークに次ぐ水準となっている(財務省法人企業統計調査)。