4月の消費税率引き上げ後、雇用の力強い改善などもあり、景気の落ち込みは少ないと見られてきた。しかし、4-6月期GDP成長率の大きな落ち込みに加えて、直近の消費動向は弱めで推移しており、不透明な動きとなっている。
ここで、気になるのが企業の対応である。業績は回復しているものの、その業績を雇用・賃金に還元する動きは欧米企業やかつての日本の状況と比べれば相対的に鈍い。
このままでは、企業のあまりに慎重な動きが景気鈍化を強めかねず、日本経済活性化に向けたアベノミクスも十分な成果を挙げられなくなる。日本経済とアベノミクスは分岐点に差し掛かりつつあり、好ましい方向で切り抜けられるかどうかは、いままで以上に企業の対応に掛かっている。
逆方向の個人消費と可処分所得の動き
6月の小売業販売額では、前年同月比でマイナス(▲0.6%)となり、5月の落ち込み(▲0.4%)からマイナス幅が拡大している(図表1)。天候不順や輸入車といった高額品への消費税増税の影響が持続していることなどが背景である。
また、内閣府が実質ベースで需要・供給両方の統計を元に作成している消費総合指数を見ても、4月以降前年同月比での減少が続いている。しかも、前回消費税が引き上げとなった97年時点と比べても、回復度合いは弱い(図表2)。
97年時点より消費回復が鈍い要因としては、消費税率の引き上げ幅が3%と97年時の2%より大きいことが挙げられるが、なにより賃金上昇が消費税を含む物価上昇に追いついていないことが大きい。