監督当局の示したこのような認識は、上海福喜食品をよりいっそうの窮地に追い込んだ。「従業員の個人的な行為」ではなく、「組織ぐるみ」の行為だと認定されれば、企業そのものが全責任を負わなければならないことは明らかだ。しかし、問題発覚のわずか2日後に、本格的な調査も行っていないはずの当局は一体何を根拠に「組織ぐるみの行為」だと断定できたのか、それこそが大いなる疑問である。
そして7月23日、上海の警察当局は、上海福喜食品が使用期限切れの食肉を出荷していたとされる問題を立件捜査し、既に5人を拘束したと明らかにした。問題発覚わずか3日後の当事者の拘束は、中国でももちろん異例の速さである。
ここまでくると、7月20日における「東方衛視」の報道番組の放映は、単なる一テレビ局の単独行為であるとはとても思えなくなった。番組放映の当日に公安局が捜査に入ったということは、どう考えても、放映の前からテレビ局と公安局が既に「連携」していることの証拠ではないか。20日の番組放映と当日の捜査開始、その2日後の監督当局による「組織ぐるみ行為」の認定、さらに翌日の公安局による当事者の拘束――。わずか4日間で一気に展開したこの一連の動きは、まさに阿吽の呼吸とも言える見事な連携プレーではないか。
もちろんその際、テレビ局と食品薬品監督管理局と公安局、行政上関係のないこの3つの機関をまとめて連携プレーをさせることの出来る唯一の上位組織は、すなわち共産党政権下の上海市政府であることは言うまでもない。つまり上海福喜食品問題に対する告発と摘発は、まさに政府当局の主導下で行われた政治的行為であることは明らかである。
人民日報、国営中央テレビも批判
それでは政府当局は一体なぜ、テレビや公安局などを総動員して、一外資企業に対してそれほど手の込んだ摘発を行ったのだろうか。
その狙いを明確に示したのは、7月24日付の共産党機関紙の人民日報の関連記事である。この記事は上海福喜食品が米食品大手OSIグループの企業であることを強調し「外資系企業は海外では法律を守っているのに、なぜ中国ではそうしないのか」と痛烈に批判した。そして同じ日に、国営中央テレビもウェブサイトで「国際的ファストフード企業が相次いで食品安全問題を起こしている。中国人の健康を軽視しているのか」と責め立てた。