人民日報と中央テレビ局の背後に中国共産党政権があることは周知の事実であるから、中国の最高権威であるこの2つの宣伝機関が上述のような批判を行ったことで、2つの大事なポイントが確信に変わった。一つは、上海福喜食品に対する摘発とそれに伴う一連の動きを主導したのはやはり共産党政権そのものであること。そしてもう一つは、それを主導した共産党政権の狙いは、まさに外資企業たたきであること、である。つまり、上海福喜食品問題に関するテレビ報道が流れた当日から、中国国内であがっていた「それは外資たたきではないのか」という疑念は、やはり事実であることが分かったのである。
そして人民日報と中央テレビ局は今回の一件を「外資たたき」の方向へ持っていくと、それがあっという間に中国国内の圧倒的な世論となってしまい、中国市場で活動している関連企業は一斉に窮地に立たされた。こうした中で、上海福喜食品の親会社の米企業だけでなく、最大の仕入れ先のマクドナルドまでが謝罪に追い込まれた。マクドナルドの受けた経済的損失はさることながら、中国市場におけるその信用失墜も深刻なものであった。
日系企業にも及ぶ外資たたきの波
事態はすべて、中国政府の思惑通りに進行していた。しかし中国政府の狙いは単に一つ二つの食品関係企業をたたくことに留まらなかった。
7月28日、上海福喜食品問題の暴露からわずか8日後に、中国当局は突如、米マイクロソフトの中国各地の事務所に対する立ち入り調査を一斉に開始した。マクドナルドとマイクロソフト、中国国内で絶大な人気を誇るこの2つの代表的米国企業がほぼ同時に捜査や調査の対象となっていることは、政権の狙いが外資企業の影響力を中国市場から一掃することであることを示している。
そして8月6日、国家発展改革委員会は、日本の自動車関連企業12社や、独アウディ、米クライスラーなどを対象に、独占禁止法違反容疑で調査を進めていることを明らかにした。
8月9日には、中国系の香港紙、文匯報(電子版)などが伝えたところによると、中国広東省の米系スーパー大手ウォルマートの店舗で、半月以上も使い回した食用油で揚げたフライドチキンを販売したり、虫が混入していたとして返品されたコメを店内のレストランで提供したりした疑いがあるとして、地元当局が立ち入り検査を行ったと伝えた。